第606話:パッソ・ホーグ~隠れ村~

「座標はこのあたりのはず……?」

 もらった座標データを元に村を探す。

 面白い体験がしてみたいと先輩に聞いたら教えてくれた秘密の隠れ村だそうだが、辺りは平原。

 村どころか建物の一つもない。

「騙されたかな?」

 もう一度辺りを見渡して呟く。

「確かにこれは面白い体験だなぁ」

 面白いのは先輩だけだが。

「せっかくここまで来たし、一泊ぐらいしていくか……」

 野営の装備も一応持ってきている。


 夜になり、三脚に火石を置いて暖を取っている。

 普通のキャンプも好きだが、あの先輩に騙されてしているキャンプとなると、少し楽しさが薄れる。

 何か、やり返してやりたい。

 そうだ、村があったことにしてやろう。

 先輩が無い村の座標を教えてきたのなら、僕は先輩に無い村の感想を言ってやろう。

 うん、いい考えだ。

 そうしたらきっと先輩はおかしいと思ってここまで来るだろう。

 それはきっと、今の僕と同じ気分だ。




 さて、どういう村があったことにしようか。

 もともと先輩も面白い体験ができる場所だって言ってたからな、詳細は聞かなかったけど面白い体験になるっていうことだけは押さえておかなければいけない。

 こんなところにある村でできる面白い体験とは何だろう。

 やはり特殊な文化形態かな?変わった文化の村は訪れるだけで面白い経験になる。

 それとも住民の生態が不思議とかどうだろう。

 そうだ、あれだ、と更ける夜の下いろいろと考えていたら気付くと眠ってしまっていた。


 夢を見た。

 夢の中で僕は不思議な村にいて、


「っていう村に行ったんですよ」

「面白い体験だっただろ?」

 教えられてたどり着いた村の話を先輩に告げると、そう笑いながら言われた。

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