第604話:バックス・ホーガ~脚のいたみ~

 丘を走り抜け、腰を限界まで落として身を隠し、すぐさま走り出す。

 これはゲームだ、全身を動かし、五感全部で周りを見て、戦う。

 ああ、とても楽しい!


 地獄は模擬的な戦場にはなかった。


 翌朝、自室のベッドから無事に降りることはかなわなかった。

 脚を床に降ろした瞬間、膝より上に激痛が走り、そのまま倒れこんで肩を痛めた。

 普段ろくに動かさない全身を限界まで稼働させた代償、いわゆる筋肉痛の時間だ。


「ぐおぉぉぉお」

 立ち上がるのでやっと、歩くことは叶わない。

 なんで昨日は終日元気だったのに朝になって脚が死ぬんだ。

 動けない、でも動かないと死ぬ、動くと痛みで死ぬ。

 動かなくても痛むし、動くともっと痛む。

 なんだこれ、地獄か。


 昼を過ぎて、やっと痛みに慣れてきた。

 少しずつ動けるようになってきて、なんとか食事をとることができたが痛みからか逆に無理な体勢を取ることが多くなってしまい、これは今痛んでいないところが次に痛むことになりそうな、そんな予感がする。

 うぐぐ、次にゲームの翌日に再びこの無様な事態に陥らない為にも普段からの運動を欠かさないようにしよう。

 毎日の走り込みが重要だ、間違いない。


 そうして、毎日の走り込みを続けて挑んだ次のゲーム、走り込みで鍛えられた筋肉とは別の筋肉を酷使することを知ることになる。

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