第602話:ダラム^スイス~不死の得方~

「死にたくないなー」

 口をついて出た。

「もう死んでるだろう」

 一緒に暇を持て余していた彼にそう指摘される。

「でも今は生きているでしょう?」

「まぁ、そりゃあな」

「前も生きてて、死んで、今は生きててじゃあ死んだっていうのとは少し違うのよ」

「そういうもんかね?」

「そういうものなのよ」

 普段はあまりこういう死生観のような話はしないから、考え方のずれは仕方ない。

「あーそういえばお前の他にも死にたくないって言って、いろいろ調べてたやつがいたな」

「不死の法を?」

「そうそう、この世界で不死なんて求めても意味ないってのにな」

「意味がないなんてことはないよ、完全な不死にはなれなくても、疑似的な不死はいくらでもいるしね」

 話していたら、後ろから突然話に割り込まれた。

「よぉ、久しぶりだな。不死の法は見つかったかい?ササクラ」


「君も不死に興味があるのかい?」

「ササクラさんでしたっけ、種族は人間ですよね。ずいぶんとお若いですね」

 大体20台に見える

「見た目だけはね、若返りの法をいくつも試してたらあまり年を取らなくなったんだよ。でも実年齢は今はいくつだったかな確か70ぐらい?内臓年齢はもう少し下ぐらいかな」

「そんなでもまだ不死じゃないんですか?」

 少なくとも老衰では死ななそうだ。

「一応ね、見た目だけだから。このままだとあと40年ぐらいで寿命が来ちゃうかな?」

「110まで生きる気なのかよ」

 友人が横から指摘する。確かに110年も生きれば十分なような気もする。

「気持ち的にはもっと生きたいかな、というよりも僕は失いたくないんだ」

「失いたくないって、何を?」

「生きているってことをさ、前の人生ではなくしちゃったから、今回の人生ではやっぱり生き続けていろんなものを見続けたいかなって、やりたいことは前後しちゃうけど、いろんなことの中には不死の法とかもあってね」

「今はどんな不死を追ってるんだっけ?」

「そうだなぁ、最近はテロン街にあるっていう薬屋が不死に限りなく近くなれる薬ってのを扱ってるっていう話を聞いたから行ってみようかなって思っていろいろ調べてるところなんだ、君も一緒に来るかい?」

「私は……」

 そこまでして不死になることはないかな……

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