第600話:カイ・サクレ~世間知らずガール~

 最近まで遺跡の中に存在した閉鎖区画の壁をぶち抜いたら、そこに彼女はいた。

 冷え切った通路に一人で倒れこむようにして座っていた。

 服も暖かい気候に対応したもので、とうていあの身で寒さに耐えられるようなものではなかった。

 おそらく偶然転生場所があの閉鎖区画の中で、運よくと言っていいのか都市機能が生きていた時はヒトが生きるのに最適な環境を維持されていたのだろう。

 植物の種が入った卵が転がっている鉢もあったし、そういう場所だったのだろう。

 さてさて、彼女を拾った場所の話はこれぐらいにして、これからの話をしよう。


 彼女を拾って腹を空かせていたみたいだから飯を食わせてやったんだ。

 そしたら、えらくなつかれてしまった。

「***** **** ***」

 相変わらず言葉はわからんらしく、翻訳機を間に噛ませるんだが見た目が成熟してるからなんだか変な感じがする(こんぐらいの年頃なら片言でも共通語は喋れるもんだ)

 まぁ、今は見るものすべてが珍しいらしく「あれはなにこれはなに」ばっかり言っている。

 だから翻訳機を切っているのだが。

 こちらは黙っているので気づいていないが。

「**** **** *!」

 お、怒ってる感じだ。

 さすがに無視しすぎたか。

「なんだ」

 翻訳機をオンにして話しかける。

「ねぇ、どこに向かってるの?あなたのおうち?」

「まぁ、そうだな」

「私あなたのおうちに住むの?」

「そうしたいならそうしてもいいぞ」

 俺は滅多に帰らんけどな。

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