第598話:コア・ガラウド~電話オフボイス~

「でさぁ、ねぇ?聞こえてる?」

「聞こえてるよ?」

 電話をしてると相手の声が聞こえなくなることがあって、いちいち会話が途切れる。

 なんだろう、普段はそんなことはないのに彼女と電話をしているときだけこういうことがある。

 彼女の携帯端末デバイスの故障だろうか、普段からぼーっとしている彼女のことだ、携帯端末の故障を放っておくぐらいのことは無い話ではない。

 仕方ない、話ながら様子を見に行ってみるか。


「なぁ、聞こえてるかー?今どこだー?」

「うちにいるよ」

 こっそりと適当に話題を伸ばしながら彼女の家に向かっていく。

 こっちから質問を投げかけてやればはっきり答えるし、どうやらこっちの声は何の問題もなく聞こえているらしい。

 どうやら向こうの声が聞こえなくなることがあるようだ。


 そんなこんなで何度も通話状況が不安定になりながらも彼女の家に到着した。

 インターホンを押そうか悩んだ結果、押さずにノブを握ると鍵はかかっていなかった。

 相変わらずの不用心さだ。

「ちょっとお前の携帯端末おかしくないか?」

「そう?」

「ちょくちょくそっちの音が途切れるんだよ」

「……」

 また途切れた、こっそりと家に入って様子を見る。別にこういうことで怒るような子ではない。

「なんか、携帯端末の調子がおかしいんじゃないのか?」

 話ながらこっそりと部屋に入ってみるとなんと彼女は電話なのに無言で相槌を打っていたのだった。


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