第584話:イレーラ‐ルガー~下痢と嘔吐~

「ゔぉえええ」

 胃が空っぽになっているにも関わらず、なにを吐き出そうとしているかもわからないまま嘔吐感が続く。

 一時間ほど前から俺を襲っている謎の嘔吐は原因も不明なのに吐き気の規模が大きすぎて死んだときのことを思い出しそうになる。

 何か変なものでも食べただろうかと思い返しても、心当たりはない。

 喉の奥にこびりついたように残る苦みにも覚えがない。

「う……」

 トイレで桶を抱えて動けない、やらなければいけないことはいくらでもあるが、全部キャンセルだ。

 だけども、キャンセルの連絡もこの調子では入れることができない。

 嘔吐に誘発されてか、おなかの調子も最悪の一途をたどっている。

 個体にすらならない便が噴き出る。

 少しづつだが頭痛もしてきて、無限に吐き戻す。

 食べても吐くだけだと何も食べることもできず飲むこともできない。

 意識ももうろうとして、このまま吐しゃ物にまみれたまま気絶するんじゃないかという心配をしてしまうほどだ。

 せめて、少し落ち着いてから布団へと移動したい、トイレで死ぬのは絶対に嫌だ。

 吐しゃ物にまみれても布団のほうが幾分かマシだというものだ。

 正直死にたくはないが、死を覚悟するほどの体調の悪さだ。

 吐しゃ物と一緒に魂の類も吐き出してしまいそうだ。

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