第580話:メイナム=メーティカ~ストンとはまる~

「……?」

 何か違和感、違和感じゃない何か?逆に何かきれいにはまったような?

 辺りをきょろきょろと見回すけど、特に何か起きたわけではない。

「どうしたのメイナム?」

「何か変な感じがして……?」

「メイナム何かしゃべり方おかしくない?」

「え?」

 思わず口を押える。

「おかしいかな?」

「普段はそんなしゃべり方してないでしょう?もっとこう、単語単語で区切るような」

「そういえばそうだね」

「違和感の正体はそれじゃない?」

「そうかも、でもなんでだろう?」

「さぁ?言葉なんてある日突然安定するものだし、そういうことなんじゃない?」

「そうかなぁ」

 何か、普段との違いは他のところにあるような気もする。

 なんだろう、そう考えたところで気付く。

「そうか、んだ」

「なんです?何か気付きました?」

「今は私がある」

「はぁ……?よくわかりませんが、よかったですね?」

「うん、すごいいい気持ち」

 きっとさっきはまった感じだったのは、どこからか飛んできた自分がうまく私にはまった音だったんだろう。


「ようメイナム、チェスで勝負しようぜ」

「いいですよ、負けませんからね」

「お、今日のメイナムはなんか雰囲気違うなぁ、今日こそ勝たせてもらうぜ」

 いつものボードゲーム対決、先手は譲って相手が駒を動かす。

「……あれ?」

 いつもどうやって駒を動かしてたんだっけ?

 指でつかんで、っていう話じゃなくて、どこにどう動かすかをどうやって決めてたんだっけ?

「おうどうした?いつもならノータイムで駒進めてくるだろ?調子悪いのか?」

「えーと、チェスってどうやるんだっけ?」

「おいおい、本当に大丈夫か?今日はやめておくか?」

「いや、ちょっと、まってて……?」

 なんだか、目の前が、ぐるぐるしてきた……?


 カタン


 外れる、音が、した。

 気付けば駒を進めていて、いつものように、チェスには勝った。

「なんだよ結局いつものメイナムじゃねーか、本当に強いなぁ」

「そうです、ね。今日は、調子が、よかった、んですけど」

「あら、メイナムしゃべり方普段に戻ったのね、どうしたの?」

「さぁ、わからない、ね」

 さよなら私、そのうちまたはまることもあるでしょう。

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