第579話:バラズディ・カルビ~時間跳躍→若返り~
「朝起きたら未来に来ていた」
いきなり知らない部屋で、でも場所は確かに自分の部屋の場所で、服もだぼだぼで、時計を見たら30年後の日付で、とりあえず未来に来たということを半疑ながらも、30年後でも付き合いがありそうな知り合いの一人の家にやってきたわけだが。
「若返ったんじゃないの? 昨日若返り薬を手に入れたって言ってたじゃない」
どうやら、この時代の俺は30歳若返って記憶も30年前、つまり今の俺のところまで戻ってきたということらしい。
「俺にとっては未来に来たのと何にも変わらねぇ……」
「この場合どうなるのかな」
「何が」
俺の現状はほぼ無視して、何事かを気にし始めた。
「昨日までのあんたはどこへ行ったのかなぁって」
「どういう意味だ?」
「今のあんたは30年前のあんたなわけじゃない? タイムスリップでも若返りでもどっちでもよくて、その30年前から昨日までのあんたの記憶を持っていたはずのあんたはどこへ行ったのかなぁって」
「死んだ……?」
「死んだってこたぁないでしょ、肉体的には今のあんたに連続してるはずだし、この世界では生き返ることも転生以外で命が湧くこともないんだしさ?」
「でも俺は過去から」
「それはあんたの主観でしょ」
「う……」
「で、どうするの? 昨日までの記憶を取り戻すの?」
「未来の記憶を取り戻っていう感覚が意味わからんのだが、もしそうした場合って今朝起きてからの記憶はどうなるんだ? 過去にあったことになるのか、今朝の記憶の位置に収まるのか、どうなるんだ?」
「知らないよ、うまいことどうにかなるもんじゃないの」
「というか、どうやってその、記憶を取り戻す?んだ?」
「知らないけど、その、若返りの薬を売ってくれた?ところへ行ってみるとか」
「それ、今の俺にはわからんのだが」
「私も聞いてないんだけど」
「…………」「…………」
これは、まさか打つ手なしというやつなのでは……?
「まぁ、しばらくしたら思い出すでしょ」
「部屋の中探して何か情報がないか探してみることにする」
これはとんでもないことになった気がするぞ……。
未来の俺、目の前にいたら殴りたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます