第581話:ヤナロⅢ~生命分割実験~

「今日はご協力ありがとうございます」

 生命を生み出す実験をするにあたって、とりあえず可能性がある生態を持っている人に当たってみたら難なくオッケーがもらえた。

「いえいえ、私でよければいくらでも実験台になりますとも、何しろ何人もいますからね」

「最悪死ぬかもしれないってこと、私ちゃんと説明しましたよね?」

『イエァ、応募をした時点でそういう記載は結構大きめに記載しましたね』

「だよねぇ?」

 こっそりと研究所に存在する人工知能(正体不明)と話す。

「心配しなくても大丈夫ですよ、私は他個体と意識の共通化を行えるので、私が死んでも代わりがいますよ。現時点で71人。一人でも生きていればそのうち増えます」

「増えるんですか!?それは生命分割に成功しているのでは」

「あいえ、違いますね。生前の世界で増えて、各個体が死亡し、個体ごとに転生してくる、という話です」

「ああ、そういう話ですか」

 びっくりした、この世界で増えられるなら実験をするまでもないじゃないかと思っていたけど、そうではなかったらしい。


「一応確認しますけど、実験の概要としては分身?を試みてもらってどこの段階で失敗判定が入るのかを空間測定ができるこちらの機械で観測する等の検証をする予定です。一応、分身っていうのは」

「ええ、体をこう」

 ぐにぐにと体が頭から分かれて二つの頭を形成して、倒れた。

『死亡確認』

「え、これ死んだの……? 今観測した?」

『突然のことだったので観測開始が間に合いませんでしたね』

「実験どうするのこれ」

「私が引き継ぎますよ」

「え」

 今しがた死んだはずの彼がぬっと顔を出してきた、死んでいるのとは別個体だ。

「意識を共通化してますからね、引継ぎもノータイムでやれますよ。ではどんな感じで死にましょうか、いえ分身?しましょうか」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る