死後の異世界

第576話：メギルア～悪魔らしい取引～

「マリウス様、前々から疑問だったんですけどぉ」

「なんだ？」

　召喚（転生）に成功してからだいぶ経ったけど、まだマリウス様の能力は戻らないらしい。

　最近は携帯端末（デバイス）の機能の検証にお熱なようだ。

　端末をいじくりながらこちらも見ずに返事をしてくる。

「悪魔ってどの世界でも魂を対価に要求してきますけど、なんでなんですか？」

「ん、ああ、そうだな。他の世界のことは知らないが、魂と引き換えに願いを叶える存在を悪魔と呼称しているからではないか？」

　それは確かにその通りだ。

　その定義だからその定義通りの存在が悪魔と呼称されているだけでどの世界も悪魔がそういう存在になってしまうのは仕方ないことだろう。

「いや、そういうことじゃなくてですね？」

「もちろん質問の意図は理解している、魂を対価として求める理由だろう？」

「ええそうです」

　冗談とか言うんだよなぁこの人、いや悪魔。

「そうだな、私の場合だが実は魂を対価にしている理由は召喚した人間がそういう契約を結ぼうと言ってくるからだな」

「はい？」

　また冗談だろうか。

「何を不思議そうな顔をしている、そうだな、例えば私がお前に召喚されて願いを受理してから一度でも魂を対価に要求したか？」

「え、えー？」

　思い返せば、対価の話はしなかった気がする。

「そうだろう？最初の人間がどう勘違いしたか知らんが、悪魔は魂と引き換えに願いを叶えてくれるというのが定説になってしまったがために、仕方なく願いを叶えた後に魂をいただいているのだよ」

「そんな、本当に？」

「少なくとも私の場合はそうだ」

「じゃあなぜ訂正して本当に望むものを要求しないんですか？」

「人間が意図的に提供できるもので私が欲するものがあると思うか？」

「はい、無いですね、わかります」

　そうだ、彼らは人間の願いを叶えられる存在。

　人間が彼らに提供できるものなど魂ぐらいしかないのだ。

「魂も私にとっては大した価値はないぞ、多少部屋のインテリアとして使えるぐらいか」

「え、じゃあ、なんで願いを叶えてくれるんですか」

「そうだな……、欲を満たして破滅へ導くのを楽しんでいるから、だろうな。私含めて殆どの悪魔の動機はそんなものだろう」

「私も破滅を望まれている……？」

「馬鹿め、お前の場合は悪魔と契約しなくても破滅一本道だろうが」

「はは、そうですね……」