第570話:バルフォン~重ね世界~
「この街は二重になっているんだぜ」
「二重?」
一緒に旅行に来た友人が、何か言い出した。
「ああ、二重だ」
「二重ってつまり、この下にも街があるってことか?」
上には空しか見えないし、そういう話だろうか。
「いや、まぁ見てもらったほうが早いかな」
そういって、
「こういうことさ」
見せられた画面には目の前にあるのと同じ風景が、少しだけデフォルメされて映っていた。
「なんだ、デフォルメカメラか?」
「いや違うぜ、これはこの街に重なっているもう一つのこの街さ」
「???意味が、分からないんだが」
「まぁそうだろうな。まぁ、今はこれ以上の説明は無理だ、一通りの観光をしたら宿へ行こうぜ」
「うーん、まぁ、そうか?」
その後、普通に街の観光をして宿に向かった。
変なところは特になかったが、妙にデバイスを注視している奴が多かったのと、さっき見せられたデフォルメカメラの大きいのっぽいのがいろんなところに置いてあったのが気になったぐらいか。
「さて、さっきの話の続きだ。覚えているよな?この街は二重だって話」
「ああ、もちろんだ。むしろその話が気になってせっかくの観光が注意力散漫になっちまったぐらいだ」
「ああ、そうか。そいつはすまんかったな。まぁ、これを着けてみてくれ」
「なんだ?」
渡されたそれはHMD、いわゆるVRをするための道具だ。
「VR?重なっている世界ってのは仮想空間なのか」
「ご明察、ただしただのVRじゃねぇぜ、まぁ感覚としてはただのVRだが。ほらさっさと着けな」
「お、おう」
急かされるままにHMDを装着し、自動で起動したVR空間に意識がシフトする。
シフトして最初に目に飛び込んできたのは、今までいた宿の部屋。
多少のデフォルメがある。
そういえば昼に見せられたのも、多少デフォルメされた同じ風景だった。
「おい、どこだ」
一緒にいた友人の姿が見えない。もしかして奴はこっちに来ていないのだろうか。
「こっちだよこっち」
声だけ聞こえた。
「ここだよここ、四角い窓が浮いてるだろ?」
声の方を見ると空間に置かれたパネルに友人の顔が映っていた、というよりも
「現実側の景色が見える」
「そう、今見えてるのは俺の
「こっちの映像が映ってるわけか」
なるほどだんだん読めてきたぞ、つまりは現実と同じ地形のVR空間を用意してあって現実の同じ座標に
昼に見た
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