第571話:ボウラフロウト~伝説のドラゴン~
「ドラゴンっているだろ」
「ああ、いるな」
「あれって、どういう生物なんだ?」
「どういう、って存在のまんまだろう。硬い鱗と鋭利な牙と爪を持つ、種類によっては空も飛ぶし火や毒の息を吐く、あとは魔法も使うやつもいるな」
「そう、それなんだよ」
「それってどれだよ」
「この世界にいるドラゴンってのがさ、僕のいた世界の伝説上の生物のドラゴンとそっくりなんだよな」
「そりゃあ、近い生物に名を充てただけじゃないのか?」
「いやいや、僕の世界の伝説の生物は現実には存在すらできなかったんだぜ?」
「世界によっても物理法則が違うからなぁ、他の世界の伝説上の生物が存在できる世界もあるんだろう」
「うーん、そういうものかな」
「逆に僕はその存在できない生物が伝説でも存在した君の世界に興味があるね。どういう経緯で君の世界にドラゴンの伝説が生まれたか考えてみよう、人々の想像の産物には絶対に理由があるだろう?」
「まぁ、そうだろうね」
「まずはイメージのベースになった生物がいるだろう、心当たりは?」
「遠い昔の生物に恐竜っていう、ドラゴンに似た雰囲気の巨大な生物がいたけども、それかな」
「きっとそうだ、その恐竜は化石か何かが残っていたんだろう、君の時代にも残っていただろう?」
「確かに、恐竜の化石は結構残ってたな……」
「ドラゴンの伝説の原点ができた当時はまだ恐竜が一般的じゃなかったんだろう。化石を見つけた人がそういう巨大な生物がいるって勘違いしたか、残った記録から想像したんだろうね」
「それがうちの世界のドラゴンの正体?」
「いいや、まだこの段階では巨大な生物止まりだ、曖昧過ぎる」
「じゃあここからどうドラゴンになっていくんだ」
「そうだな、例えばドラゴン(巨大な謎の生物)という概念を持っている国が未知の領域へと部隊を派遣して、戻ってこなかったらどうおもう?」
「何者かに全滅させられた……?」
「そうそう、それの理由付けとしてはドラゴンは持ってこいだったわけだ、巨大な生物は強いからね」
「巨大→強いっていう連想ね」
「あとは、後にその全滅した部隊を見たときの死因かなぁ、例えば普通に凶暴な動物にやられた爪の傷跡だったりが残ってたらドラゴンには爪があるし、強いドラゴンの爪だからとても鋭い、何らかの原因で火事が起きて焼死したのならドラゴンは火を吹くのだろうと推測され、そういった雑多な記録を総合した結果がドラゴンなのさ」
「宝物を集めるっていう伝説もあるけど」
「強くて危険な生物には懸賞金がかかるからね、ドラゴンに懸けられた懸賞金が元でドラゴンを狩れば富が手に入るって話が変化したんだろうね」
「伝説ってのもいろいろあるんだな」
「まぁ、ほかの考え方もあるだろうけどね」
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