第560話:クラブ・ガラル~存在意義~
生きている意味がない……
一度死んで気付いた。
僕には生きている意味がない。
前の世界で僕が死んだ後のことを聞いた、特に何も起きなかったらしい。
ずっと僕には生きている意味があると思っていた。
死んだ瞬間も、僕の存在を邪魔に思った誰かが僕を殺したと思っていた。
たとえば、僕は世界の要の存在であり、僕が死ぬと世界は崩壊するとかで、世界の崩壊を企む悪の組織が僕を暗殺したとか。
たとえば、僕は異世界の天使の生まれ変わりで、あの世界へ進攻しようとする悪魔を止めるためにこの世界で記憶を封じられた状態で暮らしていたとか。
いつか、超画期的な開発をして世界を救うとか、ヒーローになるとか、そういう話。
結局、僕は何も為さないまま死んでこの世界へ来てしまった。
そんな希望を抱いて生きていたというのに、死んでも前の世界では何も起きなかった。
崩壊も混乱も、誰かを悲しませることも。
最初はこの世界で何かを為せるんじゃないかと期待もしたりはしたけれど、この世界には何でもある。
それこそ過剰なまでに不足がない。
こんな世界で僕ができることなんて何もない、本当に生きている意味がない。
だから、僕は何も為さない為に生きることにした。
人は生きるだけでも何かを為すものだという話をどこかで聞いたことがある。
だから逆に、何も為さない一生なんてのもアリかもしれないという気になったのだ。
本当に最後まで何も為せずに死んだとしたら、この過剰な世界に不足を供給できる気がしたんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます