第544話: お芋太郎~お芋太郎~

 俺の名前はお芋太郎。

 特に由縁無くお芋太郎だ。

 というよりも、不本意にもお芋太郎と呼ばれることになってしまったのには由縁はないが訳はある。

 話せば短いことなのだが、単純にこの世界の共通語で僕の名前の音がお芋太郎という意味になってしまうというだけだ。

 この世界で名前を最初に名乗ったときに少し笑われて、どういうことかと思いつつも会う人会う人ほとんどが名前を聞いたとたん笑う。

 全然わからないまま暮らしていたが、大分共通語にも慣れたときに思い当たって調べて見たら、お芋太郎。

 お芋太郎ってなんだよお芋太郎って、別にお芋って感じの顔でもないし、太郎って感じの容姿でもない。

 ついでに三男だ。

 逆にそのギャップで笑われることが多いらしい。


 自分の名前の意味がお芋太郎であるということに気づいてから、友人知り合いの名前を片っ端から共通語の音にはめて翻訳してやってるが、お芋太郎ほど滑稽で珍妙な名前はなかった。

 なぜ俺だけこんなお芋太郎なんてことになってるんだ、改名手続きを考えたこともあるが、音だけなら慣れ親しんだ名だし、親がせっかくつけてくれた名だからな、お芋太郎は嫌だが、改名はしないことにしている。


 あと、自分がお芋太郎であることに気づいてから何となく芋は食べられなくなった。

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