第543話:ローン-マローンⅢ~体格の話~

 この世界には多種多様な人間(ここでは意思疎通が可能な程度に知能がある存在を指す)がいる。

 その多種多様さが肌の色とか腕の長さ程度の話だったらよかったのだが(デザイン面で大きく影響するためあまりよくないが)、実際は腕の数や脚の数、そもそもの骨格の形状だったりと、それ以前に体が複数パーツに分離していたり軟体だったり集合粒子だったり、液状だったりそもそも実体がなかったり(そこまで行くとうちの店には来ないが)と本当に多種多様だ。

 しかし、今回の話はうちで標準に展示してある人間型(ここでは一頭二腕二脚型の有機生物を指す)の種族の話だ。


 うーむどうしようか……。

 どうしてこうも難しい話になるのかと頭を抱える。

 今回のお客さんは、人間型の種族でうちにある標準の展示の商品をそのまま渡せばいいはずなのだが。

 なんともまぁどうしたらこんなことになるのかというぐらい、太っていた。

 口には出さないが、デブだ。

 種族標準の10倍は太っている。

 ただ太っているだけであれば問題はない、少し拡張して作るだけだ。

 問題はない問題はない、脂肪がたわんで重なり合っていて体積が歩くたびに変わってしかも安定しないとかどういうことだよ液体生物でもそんな風にならんぞ。

 どうやら彼は人間型の種族であるということ拘りと誇りを持っているようで、あからさまに人間型種族向けでない服を提供すると面倒なことになりそうな予感がする。

 さてどうするか。

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