第537話:インルⅡ~ヒトの証明~
俺は犬だ。
たぶん、生物学的には。
そしてヒトでもある。
これは自称だ。
この世界ではヒトの定義が曖昧なので、生物学のようなはっきりとしたヒトの定義はない。
であるからには、ヒトであることの証明など不可能なのでヒトと自称するしかないのは仕方のないことだ。
そしてこの世界でのヒトであることの意味も大してない。
別に犬だろうが猫だろうがヒトだろうが、申請さえすれば同様の手当て保護は受けられるのだ。
ではなぜ俺は自身をヒトだと自称するのか。
それを昨日からずっと考えているのだけども、答えが出ない。
ヒトである意味がないのに自身をヒトであると自称する理由、ヒトの方が単なる獣であるよりも上等であるからだろうか。
感覚的に上等でも、他者から見たら俺はただの喋る獣以上のものではないだろう。
本当に自己満足以外の何物でもないが、俺はヒトを自称していくのだろう。
唐突に、ヒトを自称する理由に答えを見つけた気がした。
どこかで聞いた気がするのを思い出したんだ。
「ヒトとは考える者のことである」
そう、俺は考える。考えるゆえにヒトであるのだ。
たまに考えない人間も見かけるが、それはヒトではないのだろう。
もしくは、元の世界でのヒトの定義を引きずっているだけなのか。
とにかく、俺は考える。
考える故にヒトなのだろう。
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