第536話:ルポレ=ヘロゴーロム~秘密の顔~
「よろしくお願いしますね」
新しい知り合いができた。
新しい知り合いというには少し語弊があるが、相手にとっては初対面なので新しい知り合いだ。
いや、普段から顔を合わせてるし何ならお互いの趣味嗜好まで把握している仲なのだが、今の相手は俺のことを初対面だと思っている、少なくとも、今は。
「ああ、今日はよろしく」
「本当は今日約束してたお友達が突然来られなくなってしまいましてね、どうしようかと途方に暮れていたところだったんですよ」
「へぇ、そうなんだ」
当然のようにその友人というのは俺のことで、来られなくなったのは今こうなっているためだ。
詳細は省くが、今の俺を彼女は俺だと認識することができない。
口調も普段と変えていて、おおよそ気付かれることはないだろう。
「どこ行く?映画とかちょうど2枚チケットあるけど」
「なんで持ってるの?」
「え、あー、僕もさ、友達と約束してたんだけど、そっちも反故になっちゃてね。そのチケットなんだよ。君に声をかけたのもそういうことさ」
「ちょうどよかったってことね。でも本当にちょうどよかった、その映画、私が見に行く予定だったものと同じだもの」
そらそうだ、俺とお前でその映画を見るための集まりのはずだったんだから。
「じゃあ、行こうか」
「あー、面白かった」
「ああ、とても良かった」
映画を見たあと、カフェで映画の感想について語り合い、お互いに初対面だということを忘れて楽しい時を過ごした。
「うん、今日は楽しかった。また遊ぼうね」
「ああ、またな」
「じゃあね、ルポレ」
「……ああ?」
あいつ、気付いてやがるじゃねーか!
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