第527話:ミガーナ~解釈違い~

 僕は死んだ。

 世界を救った後に、何物かに闇討ちされて死んだ。

「あなたはそういう解釈世界から来たミガーナさんなんですね」

「解釈世界?」

「いえ何でもないですよ、所謂並行世界のようなものとしてお考え下さい」

 死んだことを告げてきた女が妙なことを口走る。話が微妙にわからないのはここが死後の世界というもので多少の常識の差があるからだろうか。

「えーっとですね、恐らくあなたはこの世界で自分とそっくりで自分と同じような過去を持っているけど微妙に違う他人に出会うことがあるかもしれませんが、この世界ではままあることなので、気にせず顔がよく似ていて妙にシンパシーを感じる他人だと割り切って接したり無視したりしてあげてください」

 決して喧嘩したりしないでくださいね!と強く言われた。

 なんだ、死後の世界っていうのは変な世界だな。


「お前……俺か……?」

 数日この世界で暮らしていたら忠告された通り俺にそっくりな奴に出会った。

「お、奇遇だな。俺もお前は俺なんじゃないかって思ったところだ」

「人違いだ、じゃあな」

「おい、待てよ!お前も俺なんだろー?ミガーナなんだろ?」

 騒ぐ他人を無視して逃げる。

 あんなに頭が軽そうな俺がいてたまるか。


「う……」

 さっきの頭が軽そうな奴に見つからないように移動していたが、見つかった。

「お前、ミガーナだな?」

 頭が軽い奴じゃなかった。

 同じ顔だからわかんねぇなこれ。俺も同じ顔だけど。

「この世界にはミガーナという名前で同じ顔をした奴が何人もいるという話は聞いているな?」

「ああ、喧嘩するなってこともよく念を押されたよ」

 このミガーナは割と落ち着いている。さっきの奴と比べたら割と俺に近いだろう。

「そうか、以前血の気が多いミガーナが別のミガーナに出会って喧嘩を始め、街一つ消滅させたことがあったからな、そういう忠告もあるだろう」

「なぁ、なんで俺と同じような奴がこの世界にはいっぱいいるんだ?」

「……俺達には色々な解釈がある、そういうことだと聞いている」

「解釈?」

 あの女も言っていたな、並行世界がどうとかって。

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