第495話:ダファー~先見の魔~
いきなりだが、私には未来が見える。
正確には今の先が見えるだが、まぁどちらでもよい。
今僕が見ているのはいかにも幸薄そうな少年、常夜になった世界でうなだれてベンチに座っている。
一応今見た未来を先に明かしておくと彼はこの後自殺する。
過去は見えないからなぜそんなことになってしまうのかはわからないけど、きっと日光不足だ。
日光が不足すると鬱になる人種もいるからね。
とまぁ、このまま放っておけば彼の未来はそこで途切れる。
しかし私もね、見てしまったものを放っておくほど人に無関心ではないんだ。
「やあ少年、うなだれてどうしたんだい?これから自殺でもしようじゃないかって顔をしているよ」
「え、」
彼は冗談めかした自殺というワードを当てられ、自殺なんてしないと考えてくれたようだ、とりあえずこの後すぐに自殺するということはなくなったが、暫くした後自殺するという未来に変わった。
うん、このまま引っ張ってみよう。
「闇の世界になって気分が落ち込んでいるのかい?心配ないよ、太陽は近日中に光を取り戻すからね」
「べつにそういうわけじゃないんですけど、そうなんですか?」
「ああそうだとも、私にはわかるんだ。そうだな、光が戻るのはだいたい……あと3日後ってところだね」
未来を見て言っているのだから間違いはない、とりあえず少年の自殺をあと3日、できれば6日程先延ばしにできればまぁ彼は助かるだろう。
その後もいろいろとあの手この手で照明屋で強い光に当てたり見世物小屋でわらかしてみたりとして彼が自殺するという未来は回避され、頃合いを見て私と少年はわかれた。
最初に見たときと違って笑顔だ、うん。
さてさて、満足したし常に暗いがいつも寝る時間だし、帰ろうか。
まぁ、自殺する未来は消えたけど彼の未来はあんまり明るくはならなかった。
生まれつきとても運の悪い少年なんだろう、きっと今日私に出会ってしまったことすらも運が悪かった。
まぁそんなことはどうでもよい、単に私の目の届くところで自殺とかいう面白みがないことをされたくなかっただけなのだ。
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