第465話:ソウク=ラウラ~ビックウェーブ~
「あれ、いい波じゃないか?」
「いいや、もっといいのが来るはずだ」
「いやぁ、あれ以上のはなかなかないでしょ」
「勘だよ、勘、今日はきっともっといい波が来る」
「勘か、なるほど」
勘で波を読むとは、ここでは初めて見る人だけどなかなかのベテランなのではないだろうか。
「こなかったじゃないか」
日が衰え、暗くなるまで待っていたがいつまで経っても先ほどの物よりもいい波は来なかった。
「勘だからな。経験や知識に裏付けされた物じゃない、外れることもあるさ」
「信じた僕がバカでした」
「初対面の奴を信じるな、そんなことは当たり前のことだろう」
「僕の世界では人は信じる物だったもので」
「平和な世界だな……」
そういうと、彼は去っていった。
よく見たらボードも何も持っていない彼はいったい、何のためにここで波を見ていたのだろう。
そして、そんな彼の横で彼の戯言を聞いていた僕も別に波乗りに来ていたわけではない。
だから実のところ、波の良し悪しなどどうでもよかったのだ。
「やぁ、また会ったね」
「あんたはここで何してんだ?」
「波を見ている」
「波を」
「ここの波はね、とてもいい波なんだ」
「波の良し悪しなんてわかるんで?」
「いいや、わからんよ。本当のことを言ってしまえば暇を持て余しているんだ」
「そうかい、僕と同じだな」
「お、ありゃあ良い波だ」
「いいや、あんまりよくない」
「お前は良い波がわかるのか?」
「あんたと同じでね」
「そうか、そうだな」
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