第442話:コノベ・ラアト~仮装祭り~

 今日は仮装祭りがあるらしい。

 参加は自由で特定エリアの中で自由に仮装をして騒ぐというお祭りだ。

 俺も今日は気合を入れて用意してきたんだが、一向に仮装をしている人を見かけない。

 時間と場所を確認するが、今日この場所で間違いない。

 なのに、どういうわけか俺以外に仮装をしている奴は見当たらず、普通の恰好をしたた人ばかりがいる。

 その中で仮装をしているというのに、普通ならされそうな注目もされなくて、若干変な気分だ。


 それにしてもどういうことだろうか。俺が知らないだけで中止になった?

 そんな表示企画サイトのどこにも見当たらないが、というか途中経過の写真まで上がっている。

 上がっているが、普通の服の人しか映っていない。

 これは、そういうことなんだろうか。

 この仮想祭りはこういう普通の服を着る祭りだったのだろう。

 いやそんなことあるわけないだろう。

 本当に、どういうことなのだろうか。


 このまま帰るのもどうかと思って少し散策を続けていると、やっと仮装をした人を見つけた。

 「今日って、仮装祭りですよね?」

 向こうから声をかけてきた、どうやらあちらも周囲に仮装している人が見当たらず困惑しているようだった。

 「そのはず、ですよねぇ?」

 お互いに仮装のままどういうことなのだろうかと話していると、違う人に声をかけられた。

「あれー?君達仮装しに来たんだよね?解放更衣室があっちにあるから早く着替えてくるといいよ」

「え?」

「僕たち、バリッバリに仮装してきてるんですけど」

「え、それ普段着じゃないのかい?」

「え?」

「もしかして、周りにいる人たちみんな仮装してます?」

「何言ってるんだ、当たり前だろ?」

「え?」

「え?」

 どうやら、この辺りでは今僕が来ているようなこれを普段から着用しているらしい。

 そして、周りにいる人たちは普段僕らがしているような恰好を仮装として楽しんでいるとのこと。

 とりあえず、普段着に着替えてきたが、なんだか今度は周りが仮装している中自分だけ普段着でいるという事実に少し恥ずかしさを感じてきた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る