第433話:アルリ・レリラ~信号機~

 信号機が立っている。

 赤と緑のランプがある一般的な、少なくとも私のいた世界ではそうだった、それは道路での混乱を防ぐために設置されるものだった。

 それがただの信号機だったならば、私は気にも留めなかっただろう。

 いや、信号機自体はただの信号機だ。

 白いポールは錆びが浮いて、設置されてから長い時間が経っているであろうことぐらいのことしか変わったところはない。

 変だな、って思ったのは設置してある場所。

 ここは何もない平原のど真ん中だ。

 その何もない場所で、この信号機は何に対して信号を表示しているのだろう。

 当然、ここは道路なんて引かれていない。

 ちなみに、今の表示は赤、止まれの表示だ。

 どことどこを区切っているのかはわからないけど、赤の表示ならわたらない方がいいのだろう。

 意味はないのかもしれないけど、立ち止まって緑の表示になるのを待つ。

 なんとなく、気分の問題だ。


 はてはて、待てども待てども赤のまま。

 いつまでたっても緑にならず。

 信号無視をするのも何が悪いのかはわからないけど、染み付いた習慣が咎めるのでしたくない。

 したくはないが、変わらないものは仕方ない。

 表示は赤いが進むことにした。


 少し歩いて振り返ってみると、表示は緑になっていた。

 あと少し待てば信号無視なんてしなくて寸断じゃないか、そう思うとなんだか心がもやもやする。

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