第432話:カルバニア=リャド~肥料~
とんでもないものを目撃してしまった。
日課の散歩で街の畑が連なるエリアへ来ていたのだけど、野菜に紛れて人が埋まっていた。
首だけ地面から出て、それ以外は地面の下。
そして彼らは生きている。
一人ではない、たくさんの人間が野菜に紛れて埋まっている。
これは、事件だろうか。
「やぁ、散歩かい?」
埋まっている人から話しかけられた。
生きたまま埋まっているのか。生き埋めだ。
「散歩ですけど、何で埋まってるんですか?罪人なんですか?」
「ははは、罪人か。そう見えるかね?」
埋まりながら笑っている。結構怖いぞ。
「状況だけ見ればそう見えます」
「ん?そうかね、見えるかね。残念ながら、私たちは罪人ではないよ」
「別に残念ではないですけど、罪人でないのならなんで埋まっているんですか?」
「肥料だからさ」
「肥料?」
生きたまま畑の肥やしにされるって、やっぱり罪人とかではないのだろうか。
「そう、肥料さ。これが私たちの仕事でね。こうやって埋まっているだけでお金になるのさ」
「埋まっているだけでお金に」
「そう、地中はなかなか温かいし、気持ちがよくてね。いい体質の種族に生まれたものだと神に感謝したいね」
「そういう種族なんですか?」
「そうさ、私たちは体表面から植物の栄養になる成分を分泌しているらしくてね。生前も自然と一体となって生きていたもんさ」
「へぇ……」
そんな種族もいるんだなと、感心しながら埋まっていた人に別れを告げる。
頭の方は不作なのに、と内心思ってはいたがなんとか口からは出さずに済んだと安心しながら散歩は続く。
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