第431話:グライアム=アルファスト~鉱石の人~
周りから奇異の視線が突き刺さる。
ああ、そんなことは慣れている。
僕はそういうモノだ。
この世界には、ありとあらゆる種族が存在しているが、僕のような鉱石種族は少ない。
特に、単純な人型の岩という見た目の僕みたいな種族はあまり有機生命の住む町へは降りてこない。
だから、こうやって奇異の視線を集めることになる。
「あんた、イキモノか?」
声をかけられた、そういえば声をかけられるのは初めてだな。
「…………」
残念だが、僕は君ら有機生命体がするような音声を用いた意思の疎通というものはできないんだ。
だから、感情のない石人形のようにふるまってその場を去る。
「おいおい、無視しないでくれよ。あんた、たまーにあの店で見かけるぜ。そんななりでも茶を飲むんだな」
「…………」
彼はどうやら、僕を知っているらしい。
茶を飲むあの店といえば、あの喫茶店か。
珍しく、鉱石種族向けの料理を扱っているからよく利用する。
店主も僕に対して当たり前に接してくれるから気分がいい。
共通の話題になることを持ち出して反応を見ようと思ったのだろうが、僕はその程度じゃ動じない。
歩みを止めず、ガリガリ音を立てながら進む。
「なーんで無視するかねぇ、人違い?いやこの場合は岩違いって言うかな?岩人違い?うーん、これかな。岩人違いっていうわけでもないでしょ?」
有機生命体の彼らに僕らの見分けなんてつくものか。
確かに人違いではないが、この街にいる鉱石種族が僕しかいないことを考えれば人違いなんて起こりようもない。
「なるほどね、話しかけられたくなかった?まぁ、また見かけたら声かけるよ。今日のところは、帰るよ。またねー」
ああ、ようやく去ってくれた。
まったく、迷惑なヒトだったな。
あの店に行って、甘い物でも飲もう。
「やー、また会ったね岩の人。聞いたよー、しゃべれないんだって?さっきはごめんねー、そんななのに話しかけちゃって。こっちの言葉は理解できてる?」
まったく面倒なやつだ。
無視してメニューを叩き、注文をする。
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