第419話:バスラ・アトコル~朝起きたら~
耳が生えていた。
頭の横に二つある耳じゃなく、頭の上に動物の耳がピコンと生えた。
こんな感じの耳の動物はいっぱいいるから、何の耳かはわからないが、犬っぽい耳だ。
夢でも見てるんじゃないだろうか、現実の自分はまだ寝ていて当然頭の上には髪の毛以外何も生えてなくて、目を覚ましてしまえばこんな夢を見たことも忘れていつもの日常が始まるに違いない。
……そう思いたかったが、だめだな。
これは現実だ、夢じゃない。
認めておいた方がいい、夢なら夢でよし、どうせ起きたら忘れるんだからな。
だから万が一現実だった時のために、どうするべきか考えておいた方がいい。
まぁ。現実的に考えりゃあ病院だな……。
鏡に映った耳が、頭の上で落ち込むように垂れた、落ち込んでいるのだ。
「あっはっはっはっは!」
医者にめっちゃ笑われた。
「何がそんなにおかしいんですか、いやおかしいのはわかりますけどそんなに笑わないでくださいよ」
「いやぁ、悪いね。僕のいた世界ではそういうのはかわいい女の子がつける物だったから」
「俺みたいなおっさんに生えてても似合わないと」
「そういうことだね」
思ってても言うなよ。
「それで、原因はわかります?」
「ああ、わかるよ。何か変な精霊に憑かれたね、動物に好かれる人に良くあるんだ。どこかの世界ではそういう人が獣人の祖先になったという話もある」
「精霊が……。取れるんですか?」
「なんで?」
「なんでって、取りたいですよ」
「いいじゃないかケモノ耳、僕が貰いたいぐらいだよ」
「さっき似合ってないって言ってたじゃないですか、なのに……」
「あっはっは、冗談だよ冗談。精霊を剥がす方法だけど、そうだなまずは何の動物の精霊か判別して、その動物が苦手とする物を食べ続ければいずれ逃げていくさ」
「はぁ、なるほど。じゃあこれは何の動物なんですかね?」
頭の耳を指して聞く。
「さぁ?僕は動物に詳しくないからね。まぁ犬っぽい耳だし玉ねぎとか食べてればいいんじゃないかな」
「玉ねぎですか」
あんまり好きじゃないな。
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