第420話:ルジェリ~100人の俺~
死んだら俺が100人になった。
どういうことなのかと言えば、元々100人の人格を内包した多重人格者だったのだが、死んで生まれ直した際に別個で肉体を得たと言うことらしい。
意味はわからないが、現実としてそうなっている以上、そうなのだろう。
今はあてがわれたやたら部屋の多い、100人全員が自室を持てそうな、そんな建物の、大ホールでほぼ全員集まってこれからのことを相談している。
ほぼなのは、一部の人格が早速離脱したからだ。
集計していないから細かいことはわからないが、今ここにいるのはおおよそ90人ほどの人格だ。
壇上に立っているのは所謂主人格、生まれたときの人格で、俺たちのいれ代わりを半ば制御していたやつだ。
制御しきれずに俺たちが表に出たことなんて数えきれないほどあるが、あいつが主人格と言うことになっている。
「あー、たくさんの僕たちよ、君たちは、この世界では自由だ、どこへ行ってもいいし、ここに留まって共に暮らしてもいい。生前、僕の体に縛られて不自由な思いをさせたかもしれない、無理を言って力を貸してもらった、どうしても出したいと思っていただろう気持ちを閉じ込めた」
淡々と語り始める。
あの文章を考えたのは本当に主人格だろうか、あいつは分裂した人格の中央で個が擦りきれて人間性というものは失ったと思ってたのだが。
生前は偶然近くにいたやつの感情に引っ張られて行動してた気がするが、たぶん今回もそんな感じなんだろう。
文章の感じからすると、罪の意識か分離した奴だな。
なんだかんだで、主人格の話は終わり、俺は俺の集まりから離れた。
そのあと、しかるべき手続きをして、個人宅をもらい、今日は丸々新生活の基盤を作るのに費やした。
空で薄紫に光夜の太陽を眺めながら思う。
ああ、1日とはこんなにも長いものだったのだな。
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