第404話:アルラ~思い出語りの会~

「――私の思い出はこれでおしまい」

 定型句で締めくくられ、一つの昔話が終わった。

 ここは、思い出語りの会。

 生前のことを思い出し、皆に話す会だ。

 元々は文化の違いに寛容になるためだったり、違いを学んでお互いに暮らしやすくしようだとかそういう目的で発足した会らしいが、社会全体が既にそうなっている現在では単に話したい人、聞きたい人が集まっているだけの会になった。

 私は聞きたい側でこの会に参加している。

 色々な世界のいろいろな話が聞けて面白いのだ。

 特に好きな話は、知らない世界でのおとぎ話の思い出の話。

 その世界では常識みたいなレベルで知られているのに、私は知らない。

 語り手はその、常識で勝手に補完できるだろうと思って語っているのだけど、聞き手の反応を見て、わかっていないことに気づく。

 そうして、この世界での共通知識と照らし合わせてなんとか伝わるように語ろうと努力する。

 少し性格が悪いと言われるが、私はそういう見方をするのが好きだ。

 その、性格が悪いという見方も世界によってはあたり前の見方だったりすることもあって面白い。

「さて、これは僕がまだ生前、死ぬほんの少し前、ざっと50年程前のこと――」

 ああ、次の思い出語りが始まった。

 彼はどうやら長命な種族のようだ、それにしても50年をほんの少し前と表現するのは面白い。

 だいぶ感覚に違いがあるようだ。

 さて、どんなずれをどんな風に合わせてくるだろうか。

 楽しみだ。


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