第403話:ケロイ・ゼミア~食文化が謎な村~
「えー、今日から原始的文明を持つ村を観察します」
ビデオカメラに向かって音声を吹き込む。
「あの村は通称【カラベナ村】、彼らがそう名乗ったわけではないですが、肉を売る村という意味らしいです」
文化研究学者認定試験の一環で、こういう独立した文化を持つ小さな村を観察してどういった文化なのかをレポートにまとめなければならない。
その対象として、今のところ謎が多いカラベナ村を対象に観察しているという訳だ。
まるで動物の生態調査のようなやり方だが、本来の姿を見るためにはこうして、隠れて遠距離から観察するのが一番手っ取り早い。
「カラベナ村は、近隣の街との交流があり、彼らは村の通称通り、主に肉を売りに来ます。
他に、初日に吹き込まないといけないことはなんだったかな。
そうだ、
「カラベナ村の住人の特徴は、総じて白い肌を持ち、痩身であることです。ですが、普段は全身を覆う装束に身を包んでいるため、外見では他のそうである民族との区別がしづらいです」
種族的特徴までを調査対象の前提知識として吹き込み、一度ビデオカメラを止める。
さて、今日から暫くはこの藪の中が私の巣だ。
見つからない程度に設備を整え、本格的な観察を開始する。
まだ吹き込んでいないが今回の観察の主目的は彼らの食文化の観測だ。
彼らの食文化には謎が多い、肉を売りに来るのもそうだが、売りに来る肉が綺麗に解体されきっちり骨が全て取り除かれていること、文化レベル的にあまり余裕がないであろうはずなのに工芸品と肉を交換していくということ。
もしかしたら狩猟がとても上手く、余り過ぎる程肉を獲れるのかもしれないが、そういった場合、保存食を作るだろう。
街へ売りに行き対価として工芸品を貰っていくのは明らかにおかしい。
しかも、どの家にも対価として受け取っているはずの工芸品が飾られているのが見えない。
昼時になり、食文化を観察するチャンスが来た。
昼に飯を食べるかどうかはわからないが、見ていると村の中心の大きめの建物に村人が全員集まっていく。
狩りの成果であろう大きな動物を丸々1体運び込んでいるので今から昼食の用意をするのだろう。
建物の中まではさすがに見えないので、そのうち直接乗り込んで確認するしかないなとか考えながら自分の昼飯を食べる。
暫くカメラを回しながら待っていると、先ほどの動物が肉塊となって運び出されてきた。
解体が済んで、綺麗に骨が抜かれた状態だ。
それをどうするのかと見ていると、数人が包んで箱に入れて背負い、近くの街へと続く道を歩き始めた。
売りに行くのだろう。
はて、ここで分からなくなる。
運び込まれた動物は1体分。
運び出された肉は目算だが1体分。
彼らは何を食べるのだろうか。
その後、一日観測したが、彼らが何かを食べているようなところは観測できなかった。
もしかしたら、物を食べない民族なのかもしれない。
たとしたら、何が目的で狩猟をしているのだろうか?
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