第387話:オーム・ローグローグ〜消極的な自殺〜

 ときどき、死ぬことを考える。

 1度、死んだあとしばらくは遺してきた物のことを考えていて、死について考える機会が多かったせいか、ときどき、自分が死ぬことを考える。

 死ということは、この世界から自分の存在が消えるということ。

 少なくとも前の世界からは記憶と体を残して消えてしまったはずだ。

 それはあくまで世界への影響。

 自身への影響は、この世界へ来ること。

 ただしそれはあの世界での死の話しで、この世界ではどうなるかはまったくわからない。

 1度死んだことで少しだけ死への抵抗感が薄くなっているのかもしれない。

 この世界で死んだ先というのが気になってしまう。

 しかし、完全に死への抵抗感がゼロというわけでもなく、死ぬことは考えるが実行には移さない、準備すらしないという、本当に死ぬ気があるのかと聞かれれば特に死ぬ予定はないけど、死ぬのはあまり怖くないと答えるような状態だ。

 たまに、死ぬのにいい方法を考えたり、その影響を考えたりする程度だ。

 毒を飲む、高いところから飛び降りる、魔物の巣に飛び込む、破壊魔法を自分に向ける、そういえば、実行に移した計画もいくつかあったな。

 ただ、どれも積極的に死ににいくものではなく続けたら死ぬだろうなという不健康な生活であったり運が悪かったら死ぬだろうなという当たり率は高いが外れたときのリスクがでかいギャンブルに参加してみたりとあまり死ねる方法ではない。

 もしかしたら自分で思っているより死にたくないのかもしれないな、そんな気もするし今日は高い防波堤の上を歩いて帰ることにしよう。

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