第351話:ホウムンーダスリン~夜市の灯り~
夜遅く、日が消えてだいたい4時間ぐらい。
なかなか寝付けなくて散歩していたのだけど、大通りから枝道に入ったとところが明るい。
なんだろうかと覗いてみると、市場が出ていた。
夜市か、この世界でもそんなのが出ているんだな。
壁に電飾がかけられ、縁台が並べられ、並べられた縁台に敷物と商品が並べられ、商人が座っている。
どうせだし、次来たときに市場があるのかどうかもわからないし寄ってみようか。
うん?売り物が、よく分からない。
石や動物の牙、甲羅、乾燥した植物。
「これは、なんですか?」
共通語で訊ねる。
電飾の灯りは商品だけを照らしていて、目深にフードを被っている売人の顔はよく見えない。
「$#$#%%#&%$」
呻き声のような声で返事がよく聞き取れなかった、共通語ではないらしい。
仕方がないので、翻訳機を起動してもう一度訊ねる。
「これは、なんですか?」
「$#$#%%#&%$」
翻訳機の故障か、言っている意味はわからない。
「お兄さん、この市は始めてか?」
困っていると、別の客が話しかけてきた。
「この店じゃこの翻訳機じゃだめだよ、このヒトは話せないからね」
彼は話ながら、品物を手に取り品定めし、どういう基準で選んだのかはわからない獣の牙を持ち上げ対価のよう硬貨を売人に渡す。
「なんですか?それ」
牙のこともだが、渡した硬貨のようなものもだ。
「さぁ、僕にとっては価値のないもので、彼にとってもたぶん価値はないものだね」
それはどちらのことを指しているのかはわからなかったが、たぶん僕にとっては両方とも同じぐらい価値のないものだ。
その後しばらく、その彼と一緒にこの夜市を見て回って、相変わらず顔の見えず言葉の通じない売人相手に僕は、植物の種をポケットに入っていた砂利と交換した。
そしてお互いに名乗ることもなく別れ、ほどよい眠気を連れて家に帰ったのだった。
翌朝、市が出ていた道に行ってみたが縁台も電飾もそこにあった痕すらなく、夢だったのではないかと疑っているが、僕の部屋の窓際には植木鉢が置いてある。
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