第334話:皇勇人、他~納涼肝試し大会前編~

皇勇人


「主催俺、奇妙なことは俺に調べさせろのキャッチコピーでお馴染みのルーニード・モンス!協賛アイルーテ氏!協力、死の研究所!夏季を乗り切れ!納涼大肝試し大会へようこそ!」

 知り合いの誘いで肝試し大会に参加することになった、その知り合いは今壇上で挨拶をしている。

 結構規模が大きいようで、夜の森の外れの広場にはだいたい50人程集まっている。

「一応、肝試しが何か知らない奴のために説明しておくぜ!肝試しってのは、暑くて死にそうな夜にひやりと寒くなるような体験をして暑い夏季を乗り切ろうっていう、そういう風習だな。いろいろな世界に似たような風習はあるみたいだし、これ以上の説明はしないでいいかな」

 俺が知っている肝試しと同じだ、これからこの暗い森を歩いて奥にあるお堂から札を取ってくるとかそんな流れなんだろう。

 脅かし役が森に隠れているんだろうけど、怖いってよりもビックリするからあんまり好きじゃないんだよな。

 あくまでビックリするから苦手なんだ。



ルルニア・ローテル


 所長に誘われて何をやるかもわからないまま来たけど、肝試しをするのか。

 肝試しは知識としては知っているけど、実際に参加するのは初めてだ。

 確か、悪しき死者の魂を祓うことを目的とした儀式を遊戯として模倣したのが始まりになった、納涼と度胸試しを合わせた遊びだったはず。

 悪霊班と浄霊班に別れて、悪霊班が浄霊班を驚かしたりして儀式の遂行を邪魔するという流れ。

 まれに本物の悪霊が悪霊班に紛れて現れることがあると禁止になっていたな。

 この世界では幽霊はいないから、悪霊が紛れ込むなんてことはないから安心だ。



ルーニード・モンス


「肝試しの流れを知っている人はすでに、どういった驚かされ方をするのか不安に思ったり期待をしたりしていると思うが、なんと今回の肝試しに驚かせ役はいないぜ!あらかじめ言っておくが、驚かし役のヒトなんていないぜ!」

 そう宣言すると会場がざわついた。

 そりゃあそうだ、肝試しの肝は暗く怖い道でどんな驚かせ方をしてくるかなんだ。

 その驚かすヒトがいないとなればざわついたりもする。

「正直に言って、この会場には多種多様な世界のヒトが集まっている。あんたら全員を驚かせるようなからくりはさすがに用意できなかった、全員に満足してもらいたかったからな、中途半端なギミックじゃあダメだ」

 合図して、今回協力してくれる、死の研究所のヒトを呼ぶ。

「話は変わるが、この世界には幽霊、おばけという存在がいないという話を聞いたことがあるだろうか」

 この世界の常識では最近までそうなっていた、知らないヒトも結構いるが、知っているヒトも会場には同数ぐらいいた。つまりは半分ぐらい知っている。

「実は、その説が最近覆された。この死の研究所では幽霊の存在が確認できたらしい」

 会場の何人かは、「ああ、そういうシナリオか」と納得したような顔をしている者もいた。

 そういうシナリオだが、フィクションじゃない。そう思っていた方が幸せかもしれないが。

「じゃあ、話の続きをお願いします」

「ああ、まかせろ」

 死の研究所のヒトにマイクを渡す。

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