第327話:サクア=ミミクス~奇妙な会話~

「やぁ、ちょっといいですか?」

 カフェで暇そうな男の対面に座り話しかける。

「なんですか?」

 男は怪訝そうな顔になる。知っているさ、いつもそうなんだから。

「あなたなんなんですか」

 怪しい男を見る目だ、逃げ出さないだけ良い。

「僕は通りすがりの超能力者、すこしだけ不思議な体験をさせてあげようと思ってね」

 僕は超能力者ではない。

「もう十分不思議だ」

 そりゃあそうだ、でもこれからが本番。

「君は僕の超能力をだいたい察しているね」

 こんなに分かりやすくやっているんだ。

「読心術?」

 そうだ、僕は読心術が使える超能力者の振りをしている。

「うーん、残念だけど僕の能力は読心術じゃない、そう勘違いするのは仕方のないことだ」

 男は驚いた顔を見せる。

 僕は嘘をついていない、僕のやっていることは心を読んでいる訳ではないからだ。

「読心術じゃないのなら、なんなんですか」

 その疑問はもっともだ。気にならないわけがない。

「僕がやっているのは先読みさ。僕の言葉に、君がどう返すかを予測して喋っている」

 男はひらめいたような顔をする。

「じゃあ、俺が次になんて言うか当ててみろ」

 男はすこし苦い顔になる。

「さぁ?流石の僕も、適当に発音されたら当てようがない。たぶん、*****」

 男はあり得ないと言う顔になる。

 どうやらだいたい当たっていたようだ。

「さて、不思議体験はここまで。じゃあね」

 そうして僕は席を立つ。

「なんだったんだ」

 男からすこし離れたところでは呟いた。

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