第326話:ロクソニウス~時の迷い子~

 今は3時。

 明るくなってから3時間が経ちだいたい街が活気づき始める時間、太陽は空の上で眩しく燃えている。

 目の前の看板には、営業時間8時~10時、15時~16時と書いてある。

 なんでこんな早くに来てしまったかといえば、勘違いしたからだ。

 先日、ここを通りかかったときにこの看板を見て「8時からやってるのか、朝食にちょうどいいな」と思い、朝1時ぐらいに起きてすこしうとうとして、家を出たのが2時半頃、そしてここに着いたのが今、だいたい3時。

 自分の感覚では起きたのは7時ぐらいだし、家を出たのは8時だし、今は9時だ。

 言ってしまえば、時間の数え方を間違えたのだ。

 この世界での時間の数え方は太陽に火が灯ったらそこが0時、火が消える時間が16時だ。

 基本的に同じような周期で火がついたり消えたりするので時間の数えかたに使われているらしいが、季節によってズレがある。

 標準的に使われている時計は前日の時間によって調整されるが、感覚としてはわかりづらい。

 そして俺が元々いた世界での時間の数えかたは太陽が最も高くなる時間を中間時間正午として16時、正午を中心として午前16時間午後16時間というのが基本だ。

 そしてだいたい朝食を食べるのは8時になる。

 日が昇る(この世界と違って大地の周りを周期的に回っていた)時間は6時ぐらいでさらに1時間後に起き、1時間ぐらいうとうとして家を出る、そこから1時間して朝食を食べる。そうしてだいたい9時に食べることになる。

 だからその感覚で考えると8時~10時、15時~16時というのは朝食を食べるのに丁度良く、早めの昼飯に行く店というイメージになってしまう。

 しかしこの世界での8時~10時、15時~16時というと、昼食と夕食に丁度いい時間の店になるのだ。

 この時間の数え方の感覚だけは何年過ごしても慣れない。


 起きてからなにも食べてない腹をさすって、3時にやっている店を探すことにした。

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