第328話:マニス~海の真ん中で~
ぷかりぷかり
ここはベベディス海。
僕は今、海の真ん中で浮かんでいる。
船なんかない。
ぷかりぷかりと僕は海面に仰向けに寝転がっている。
今の時期とても暑いが、海に背中を預けているととてもひんやりして気持ちいい。
風もよく吹いて涼しいし寝転がっていることによってだんだんと眠くなってきた。
だんだんと日も弱まる時間になってきたし、うとうととして、そのまま寝てしまってもいいかもしれないという気持ちになってきた。
ぐぅ
夢を見た。
そう、これは夢だ。
見たのではなく、見ている。
夢を自覚するなんて珍しい。
自覚するまでの記憶がなく、たぶん、僕は僕であるという当たり前の個としかわからなかった。
自覚してからの展開は早かった。
僕は海の上にいた。
海の上を歩いている。
どうやってここまで来たんだろうと考えたら答えはすぐに思い出せて、空から落ちてきたんだったということがわかった。
だったことがわかったっていうのはなんだか変な表現な気もするけど、本当にそうだったことがわかったんだから仕方ない。
足元の海は深く、底は見えない。
海なんだから当然だよと、思い出される記憶に突っ込まれた。
じゃあどうして僕は海の上に立っているんだ?って僕の記憶に聞くと、沈んだ。聞いちゃいけなかったみたいだ。
沈んだけれども特に慌てる必要はなかった。
突然沈んだら普通は慌てることも僕は忘れてしまっているみたいで、そのまま沈んだ。
息が苦しくなるなんて事もなく、慌てる理由がなかったからかもしれない。
どこまで沈んでも海の底は見えず、だんだん沈むのも飽きてきて、海面へ向かって泳ぐことにした。
水を一掻きするとすいーっと進み、すぐに海面に出た。
その海面は固く、地面だった。
海から上がったそこは向かし住んでいた町で、海の側に高い高い塔がある町だ。
その塔は、頂上から途中で途切れる橋が延びていて、海の上まで行けた。
僕は少し歩いて塔の頂上へ行き、橋の端まで来ていた。
そう、僕はここが好きだったんだ。
そして強い風が吹いた。
夢を見ていた。
僕が死んだときの夢。
青い夜の下、海の上を歩き出す。
僕は今住んでいる、海辺の町へと帰ることにした。
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