第316話:スイン-キルティ〜扉続き〜

 どうなっているんだ。

 扉を開けても扉。

 細いく短い通路を挟んで扉。

 これで数え始めてから34枚目の扉。

 後ろの扉は開かない。

 戻れない。

 なぜこんなことになっているのか、考えてみたらやっぱり自業自得のような気もする。

 この事態を招いたのは、間違いなく自分自身だ。


 話は1時間程前に遡る。

 テロン街に来ていた私は、ナビを閉じて歩いていた。

 一仕事終えて、気分が高揚していた私は目的のない散歩をすることにし、目についた存在感のある扉を開けてしまった。

 そして、扉の先には別の扉。

 デザインも違う扉。

 面白いところに繋がっていたなと思い、次の扉を開ける。

 次も扉。

 開けても扉。

 様々なデザインの扉が現れ、楽しくなってきた。

 その次も扉と、高揚した頭は次々と現れる扉を開けて進むだけになっていて、戻ることなんて考えていなかった。

 というか、ナビを使えばどこからでも帰ることができるとも思っていた。

 テロン街でのナビの信用度はそれ程に高く、「現在位置からゲートへ向かうルートは存在しません」という表示を見たときにやっと、どうにもならないのではないかと気づいた。

 来た道は閉ざされ、進める道は一つの扉。

 この扉はテロン街の歪みの影響を受けておらず、ランダムにつながっているというわけではないのだろうか。

 そういえば、テロン街に存在する店や家の中では繋がりがおかしくなるということはない。

 中に入ってさえしまえば、応接室の扉は応接室につながるし、トイレの扉はトイレにつながっている。

 つまりこの扉の続く通路も、次の扉へ続く扉であり、他の場所へは繋がらない扉なのだろうか。

 狭い扉に挟まれた通路で私は途方に暮れる。

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