第315話:ケイク=ロンロン~ターミナルの昔を探って~

「ターミナルがいつからあるか、とかどうだろう」

 それは何の気なしに出た話題だった。

 最初にテーマとして挙げたのは僕ではなく、グループの一人。

 顔はわかるが名前を知らない、しかしクジの結果同じグループになってしまった彼からの提案。

 4人のグループで気になった何かを調べるという課題。

 課題の内容として申し分のないテーマだ。

 教師に提案報告をしたらすぐに承認された。

 いつからあるのか、ではなくいつどうやってできたか、ターミナルの歴史というテーマに改題されてしまったが。


「それで、どうする?」

 誰もなにも言い出さないから僕が仕切ることになった。

「どうするって、何がさ?」

 テーマの提案者ですらこのザマだ。

「ターミナルの歴史を調べるんじゃないのか?」

「あぁ、そうだったね。いやぁ、まさか勝手に変えられるなんて思ってなかったからさ。いつできたかぐらいなら知ってたけど、どうしてどうやってどのように、なんて流石に知らない」

 なるほど、既に知っていたことをテーマに選べば楽に課題を終えることができるという考えだったのか。

「まず、それぞれが知っていることを挙げてくれ、そこから情報を広げていって、最終的にまとめよう。お前、えーと、名前はなんだ」

「ベスだ、クラスメイトの名前ぐらい覚えておいてくれ。ロンロン」

「ケイクと呼んでくれベス。このままだと進めづらい、知っている情報を挙げるついでに名前も一緒に挙げてくれ」

 実は他の3人も知らない。

「シークム・ベスだ、ターミナルが完成して今の形になったのはおおよそ7000年程前だと聞いたことがある」

 7000年前か、とんでもない昔だな、資料が残っているかどうかも怪しい。

「シャニ~リジルよ、特に知っていることはないけど」

「ノアーオクスです、私もターミナルについて知っていることはないです。でも知り合いにターミナル職員の人がいますよ」

 有用だな。

「さて、名前の確認も終わったところで調べるか。とりあえず、7000年前の資料から」

「出たわ、『ターミナルにワープゲートが正式配備、世界が縮まる』って記事があるけど」

 発言者はシャニ、めちゃくちゃ調べるのが早い。

「そんな昔の記事なんてどこから見つけてきたんだ?」

「そんなの、昔って言っても当時既にグローバルネットは整備されていたし、年代とキーワードを指定して検索をするだけですぐに見つかるわ」

「そ、そうか、ありがとう。で、内容は?」

「『今までは技術再現が不完全で実用不可能だったワープゲートがついに完成、人の転送が可能となり、国同士の交通がより便利に』見出しのわりに、簡潔にしか書いてないわ」

「なるほど、じゃあ当時既に今の形とは言いがたいものの、ターミナルはそれ以前から存在したのか」

 ターミナルが今のように国同士を繋ぐ存在になったのは7000年前のその時のことらしい。

 おそらくベスが言っているのもこれだろう。

「それ以前にターミナルがどういう場所だったかたとか、の記録は?」

「そうね、最古のもので3万4000年前、グローバルネットが整備され始めたばかりの時代『第4889転生ポイント及び、周辺に築かれた町の発見、交流に成功、世界はより拡大する』この時点でもう、4889個もあるみたいだけど」

 転生ポイントというのはターミナルのある場所の基準だ。

 特に人が片寄って転生してくる場所のことで、周辺に街ができ、街が繋がって国ができる。

「これ以上はグローバルネットを手繰るだけじゃ無理ね、詳しい人に聞きに行くか、書物での記録が残っていないか探しにいかないと」

「じゃあ手分けするか、ベスとノアはノアの知り合いのターミナル職員に当たってくれ。僕とシャニは万世の図書館ででも調べにってみる」

「ロンロン、熱心だね」

 ベスが不思議そうに聞いてくる。

 一応テーマの提案者はお前なんだが。

「別に、気になったから調べるだけさ。しかも課題としてグループメンバーを使えるとなればやる気もでる」

 僕はそういうやつなんだ。

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