第291話:ファクタ=フォークスⅤ~ぷにぷにころろん~
「嘘だろ……」
目の前にコロコロと転がる球体生物の数を見て呟く。
地を埋め尽くさんとするすそれはすべてが新種動物、一匹持って帰ればいいのだがそれには問題があった。
何が問題かってこれ、増えるのだ。
少し前、未開地域へとやってきた俺は早速と幸先が良くとこの生物を見つけた。
その時は一匹で大きさも手ごろだったからとそのまま拾ったんだ。
カバンに放り込んで他にも何かいないかと散策していたところ、同じ球体生物がコロンと目の前に転がり出てきた。
同じ生物は一匹でいいと無視していたのだが、その後も何度もその球体生物はコロコロと出てくる。
気が付けばどこからカバンに入ったのか、あふれ出すほど入っており、重くなったカバンを仕方なく捨てた。
なんだこいつら、やばいやばいやばい。
長年新種を探して歩いてきたが増えるなんてありえない!
他の世界ではこうやって増える生き物もあり得るのかもしれないが、この世界ではありえない。
この世界では転生以外では生き物は増えない。
これは絶対のルール、わかってないことが多いこの世界で唯一と言っていいほどの不変の法則のはずだ。
それなのにこの生物は増えていく。
考えられることはこの近辺に元々大量に生息していて最初に拾った個体が呼んだということ。
もしくはこの群れで一匹ということだ。
どちらにしても数が多すぎる。
単純に拾っていくだけではまた増える。
持って帰るのも一苦労だ。
一苦労というか、持って帰れない。
最近新種運がない、本当にない。
さてどうしたものかと、少し考える。
そうだな、諦めて帰るか。
これは流石に無理だ。
増えすぎるし多すぎる。
そして、帰るかと歩いて最寄りのゲートにたどり着いたとき、後ろを指されて「それなんですか?」と言われたときは驚いた。
そして最初の惨状というわけだ。
「どうするんですかこれ」
どうしようもなく立ち尽くす俺とゲート管理の人。
どうするっていったってこれ、どうすればいいんだこれ。
「とりあえず、通報です通報。こういう時に頼りになる集団がいるんですよ」
と我に返った俺は振るえる手で携帯端末を操作し、あの集団に連絡を入れた。
その場から逃げ出したかったが、移動した先でまた増えそうだったので最後の一匹を完全に消滅させるまでその場を離れることはできなかった。
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