第253話:橘慶太Ⅲ〜異世界人の一生〜
ソロモン・グランディをご存知たろうか。
月曜日に生まれてなんやかんやあって日曜日に埋められるというイギリス人の生まれてから死ぬまでを明るく歌った、マザーグースの歌の1つだ。
地球で生まれて育っていれば1度は聞いたことがあるだろう。
この世界で作家をしている僕は、ふとその歌を思いだして少し気になった。
他の世界の人たちは生まれてからどのようにして過ごし、どのように老いて、どのように死んで、この世界に来たのか。
それを調べてみよう、そういう気分になった。
ネタがなかったこともあって調べてみることにした。
グローバルネットで生い立ちを語ってくれる人の募集をかけて、なんとか1人みつかった。
「俺はですね、語りやすいので死んだ方から語りますが、いたって平凡な死に方をしましてね」
「その平凡な生き死にを聞きたいんですよ」
「そうですかい?じゃあ、始めます。俺が死んだのは、67歳の暑い日でした」
そう言って懐かしそうに話し出す。
「俺は、畑で作業をしていたんですが、光に包まれたかと思うと」
「ストップ、それ本当に平凡な死に方ですか?」
「ああ、もちろんだ。俺の世界ではみんなこうやって死ぬ」
「……わかりました、続けてください」
「おう、光に包まれたかと思うと、声が聞こえるんですわ、『あなたの最後の日は3日後です、それまで悔いなく過ごしなさい』ってな。そんでついに死ぬのかぁと思ったんですがあんまり気にすることなく、3日後にこの世界へ来たんですわ」
光に包まれて声が聞こえる、それで死を予告されるのか。
よかった、UFOに拐われて死んだとかじゃなくて。
「んで、それまでの話はまぁ普通に働いて」
「その普通にってところを詳しく」
「ああ、畑に行って機械のボタンを押して錠剤を規定数貰う、そんで帰るっつう仕事をしてた」
「錠剤?それは他で売るため?それとも自分で使うため?」
「自分で使うためだな、毎日健康を維持するのに必要な数が畑でもらえるんだ」
畑で錠剤を貰うってのは、畑って言葉の認識が違うんだろうか。
「子供の頃の話は?」
「子供の頃、子供の頃なんてなかったな。生まれたときから大人の姿で、死ぬまでずっとだ」
生まれたときから大人で、死ぬまで毎日錠剤を貰って過ごして、死ぬ3日前に宣告されて、苦しみもなく死ぬ。
なんていうか、全く想像できない。
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