第252話:ヒュード=バンⅥ〜ある日、熊に出会った〜
熊に出会った。
「ヤバい」声にでないように口の中で呟く。
森を探索していたら体長約20クロン(6m40cm)、野生の魔物ではない動物の中で最も死を体現していると言っても過言ではない獣、熊に出会ってしまった。
正直な話、俺ならば熊を相手にしても無傷とは言わないが素手でも勝てる。
それでも、やはり強い。
戦闘力的な話ではなく、魔物にはない圧がある。
低級な魔物ならば対面したときの圧力だけで逃げ出すだろう。
上位存在ですら威圧する力を持っている。
それが熊だ。
そんな熊、特に大きなこいつは俺を威圧してビビらせた。
負けるわけがないというのに、怖ぇ。
できれば戦わずに逃げたい。
睨み合えてるうちはお互い動かない、熊から視線をそらすなんてことはないから、俺から視線を外さなければお互い動かない。
視線を外せばいくら俺でも熊の初撃を避けられない。
しかし集中力がもつわけもなく、視線を外してしまった。
その瞬間、見えてはいないが死角側から熊の手が振られるのを感じた。
避けられない速さではない、そう思ったのだが、それは通常の話であって通常よりも大きな熊に威圧されて鈍った動きでは受けることで精一杯だった。
うまく爪を避けて受け、ダメージも流すが威力を殺しきれるはずもなく、吹っ飛ばされた。
しめた、このまま茂みに飛ばされてそのまま逃げよう。
その考えは半分ぐらい上手くいった。
茂みに飛ばされて隠れるところまでは上手くいった。
逃げることに気を取られて、受け身を取り損ねて体を痛めて逃げることができなかった。
隠れることにはなんとか成功しているので、そのまま息を潜めて、熊が去るのをしばらく待つしかなかった。
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