第207話:ローレン〜世界を滅ぼしてみて〜
暗いな……
世界を道連れにして、俺はこの闇の中に永遠に浮かび続けるだけか。
いや、なんだ?
思っていたよりも体がはっきりしているし、重みも感じる。
世界諸とも消滅したはずだが、意識も消えていない。
闇の中に壁がある。
やけに狭いが空間が存在する。
どういうことだろうか、まさか世界を消滅させたにも関わらず、俺は生き残ってしまったのだろうか。
この壁の向こうには闇すら存在しない、永遠の無が広がっている、いや無なのだから広がってなどいないのだろうか。
どうなっているのかと気になり、壁を軽く叩いてみる。
漆黒の壁は力を返すことなく、音も立てずに割れた。
「やぁ、もしかして君がトクステクルスを消滅させた張本人かな?」
壁の外は白い部屋。明るすぎると言うほどではないが、眩しい。
そこには、白い人間の男がいて何のことなしに話しかけてくる。
「その口ぶりでは、俺がローレンだということを知っているようだな」
「ああ、君はローレンというのか、世界はトクステクルスでよしと」
「待て、質問に答えろ」
何だこの男は。
「えーと、質問? あぁ、ここがどこで今君はどういう状態なのかって話かな?」
「そうだ、俺は世界を消した!なのに何だここは、何が起きている!?」
「うーん、あまり怒鳴らないでくれ、翻訳音声が聞き取りづらいから。えーと、まず何から話そうかな……。そうだ、まず前提から話そう」
「前提?」
「ここは死後の世界だってこと、君は死んだか消滅したか知らないけど、元の体は生命として存在していない」
「ここは、俺が消滅させた世界とは関係がないのか?」
死後の世界? 死後の世界とはなんだ。死んだらアストラル体となり永遠にさ迷うのではないのか?
「うん、関係ない世界だ。ちゃんと君は元いた世界を消滅させているよ、ここ以外はトクステクルスからの転生者でてんやわんやしてる頃かな。いやー、世界を消滅させた男がすぐに来るって聞いてたけど、思ってたより話がわかる人でよかった」
全くわかってない、この男の軽薄な話し方もあって、状態の把握が進まない。
「簡潔にまとめろ、俺はこれからどうなる?」
「別にどうも? まぁ、この世界で死ぬまでゆったりとした生活を送るもよし、魔物と戦うもよし、新しいものを作るもよしだし、何でもよしって感じかな。あ、でも世界を滅ぼそうとするのはやめた方がいい、この世界には様々な世界を救った英雄達が数多くいるし、無限に続くこの世界を滅ぼす前に自分が滅ぼされてしまうからね」
全然簡潔にまとまっていない。
「つまり、好きに生きろと」
「そういうことさ。まぁ少しばかりの手続きだけしてもらうけどね」
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