第206話:皇勇人ⅩⅡ〜この先落ちます〜

【この先落ちます】

 そう書いてある看板が立っている。

 ここは【トコノコ壁にある町】という、大きな壁にあるということで有名な町のはずなんだけど、建物はどれも少し変わった形をしているだけで大きな壁らしきものは見当たらない。

 それを探して歩いてたのだが、そこで見つけたのがこの看板だ。

【この先落ちます】

 意味がわからない。

 この先落ちますとは、穴でもあるのだろうか。

 見たところそれらしいものは見当たらない。

 煉瓦敷の道にレール?のようなものがまっすぐ引いてある。

 そしてその両脇に壁。

 大きな壁というほどのものではない。

 どこからか見たら繋がって大きな壁に見えるとかだろうか。

 しかし、この【この先落ちます】という看板はなんなんだ。

 トンチの類いだろうか。

【このはしわたるべからず】みたいな。

 しかし、言葉が違ってはそういうことば遊びみたいなとんちも理解できない。

 立ち入り禁止のようなことが書いてあるわけでもないし、行ってみるか。

 落ちて死ぬようなことなら厳重に封鎖してあるか、直すなりしてるだろう。

 そして、看板を超えて一歩踏み出したとき、足が滑った。

 いや、地面が滑ったのではない。

 足が地面につく前に、向こうに引っ張られた。

 感覚としては滑ったようなものだったが、実際は落ちたというのが正しい。

 そういうことか、と思いながら梯子に掴まってゆっくりと壁を降りることにした。

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