第194話:ローン-マローン〜服屋の苦悩〜
服屋を始めたものの、困ったことになった。
服屋の看板をみて入ってくるお客さんはいるものの、思ってたのと違うのか残念そうな顔をして出ていくことが多い。
僕のお店は僕の世界の服を扱っているのだが、如何せんこの世界には人種が多い。
体の形も合わない人が多いし、民族的な事情で着れないと残念がられることも多い。
それに、服は申請すればそれぞれの世界のシンプルなものを支給してもらえる。
更には、自分でデザインしたものをすぐに作成してもらえるサービスもこの世界にはある。
服屋は自分の作った衣服を他の人にも着てもらいたい、自分でデザインはできないがおしゃれはしたい、そういう人のための場所だ。
しかし、店を出してみてわかったのだが、僕の世界の服はこの世界ではあまり需要がないらしい。
それでも、僕と同じ世界から来てる人もいるだろうに、全く売れない。
僕のいた世界では特に宗教等で着られない服とか、着なければならない服とかは無かったけど、他の世界の服の方がいいんだろうか。
そうでもないと思うんだけどなぁ、町では普通に見かけるし、僕の知らないだけで大手のお店があるのだろうか。
それとも僕のいた世界の人は皆デザインは自分でしたい人だったのだろうか。
その気持ちはよくわかる。
思えばあの世界の服はダサい規定のデザインの服しか着られなかったのだ。
僕も自分でデザインした服を着たいと死ぬまでずっと思ってた。
なるほどなぁ、もしかしたらそういう思いを皆持っていてこの世界で自由にデザインして作れるようになったから自分でデザインして着てるのか。
つまり、僕のお店はここで終わりなのではないだろうか。
僕のお店で扱っている服は誰も買わない、展示サンプルから選んでその場で作る形式だから在庫分で赤字等ということにはならないが、暇だし、やっぱり売れないと寂しい。
…………こうなったら、多少の無茶をやるしかないか。
お客さんが来ないことで悩んでいた数日後、僕のお店には結構予約が入っていた。
展示売りは続けているが、別のサービスも始めたのだ。
元々は別の世界のお客さんは買ってくれなかっただけで来てくれていたのだ。
僕が始めた新しいサービスとは、展示してあるデザインの服を指定された形の服に落とし込むというサービスだ。
正直、めっちゃキツい。
しかし、やってみると案外楽しいものだ。
デザインの幅も広がる気がする。
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