第193話:バース・リンⅢ~似ていても違うから~
「ねぇ、リン」
「なあに、ピピ」
仕事の休憩中、雑談の中で仕事仲間のピピが話しかけてきた。
「リンって犬の言葉がわかったりする?」
「え、何いきなり」
「いやね? 最近うちの子が元気なくて、病気じゃあないみたなんだけど、言葉がわかるのなら直接聞いてほしくて。ほら、リンって犬の獣人でしょ?」
確かに私は犬の特徴を持つ獣人だ。
「だからと言って、私は別に犬の言葉がわかったりはしないよ」
「そうなの?」
本当に不思議そうに聞いてくる。
「そうなの?って、逆に聞くけど、ピピはウサギの言っていることがわかる?」
ピピは長い耳を持つウサギの獣人だ。
「ウサギは喋らないし、そこまで知能があるわけでもないし」
「犬も大体同じだよ」
「えー、でも犬はよく鳴いてるじゃない」
引き下がってくるなぁ、無理だって言っているのに。
「うーん、そうだなぁ」
無理だってことを理解してもらう説明を考える。
どう説明すればわかってもらえるだろうか。
ウサギの言葉がわからないように私も犬の言葉がわからない以上の説明が思いつかない。
「えーっと、そうだ、あれだよ、異世界語と同じ、同じ人種でも世界が違えば言葉も違うでしょ?」
「確かにー!?」
まったく思いつかなかったという顔で驚かれた、そこまで驚いて納得することでもないだろう。
「おや、二人とも。もうそろそろ休憩の時間は終わりだよ」
「あ、店長。すぐ出ます」
「はーい、出まーす。あ、そうだ店長」
「ん?なんだいピピ君」
「店長は犬の言葉ってわかりますか?」
「犬の言葉?」
いや、わかるわけないでしょ、と私は思った。
私は犬だけどわからないし、店長は山羊だ。
もっとわかるわけがない。
「わかりますよ」
「えー!?」
「ホントですか! やったぁ!」
「なんでわかるんですか!? 店長は山羊でしょ」
「そりゃあわかるよ、僕は動物が大好きだし、これを持ってるからね」
そう言って店長が取り出したのはとある機械。
「これは、動物専用の翻訳機だよ。まぁ鳴き声を翻訳するというよりは脳波を解析したりして言葉に変えるんだけど、うちでも取り扱っているよ、あまり出ないから知らないかもしれないけどねぇ」
「そんなものが……」
「値段は500パソだよ」
「お金取るんですかぁ?」
「そりゃあ商品だからね、僕もいちいち出向きたくないからね」
まぁ、それはそうだろう。
値段交渉をするピピを放っておいて私はお店の方へ出る。
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