第192話:ユユ+ノノ〜転生食堂〜
うちの食堂には少し変わっている。
私一人でやっているお店だが、私は料理ができない。
料理ができないのにどうして食堂をやっているのかと聞かれたら、特に理由はない。
元々は私はただのウエイトレスだったのだが、前の店主が引退するときになんやかんやで私がお店を引き継ぐことになったのだ。
ちなみに前の店主も料理はできなかったらしい。
そう、料理ができない店主が切り盛りするこのお店の秘密、いや秘密ではないが、このお店の変わっているところをいくつか紹介しよう。
まず、メニューリストがない。
このお店では注文しない、しても何人分という形でしかしない。
そして、このお店の特色的に普通のお客さんは一人分ずつしか食べない。
そして二つ目、いつ料理を出せるかわからない。
作っているのは私ではないので、どのタイミングで現れるのかがわからない。
お客さんがいないときに現れてしまった料理は残念ながら廃棄だ。
私のお腹が空いていれば私が食べるのだけど。
そして、お客さんの望むものが提供できるとは限らない。
どんな料理が出るかはランダムなのだ。
あ、ちょうどお客さんが来た。
続きはお客さんに料理を出しながら説明しよう。
料理も、うん、ちょうどできているようだ。
お客さんが席に着いたので、注文を聞かずに私は卵をお客さんの元へ運ぶ。
このお客さんは初めてのお客さんだったようで、少し驚いている。
「ああ、こういうお店は初めてですか?」
「美味しそうな匂いがしたもので、ここはどういうお店なんですか?」
「ここは転生食堂、お客さんが来たときに転生してきた料理を出すだけのお店です、あ、食べると死ぬようなものはあまり来ないはずですので安心してください。種族的にダメな物が入ってそうな場合は言ってくださいね、別の物を出すので」
他にも一通り初めてのお客さんに説明するべきことは説明した。
そう、つまりはこのお店で出す料理は全て、具体的にはよくわからないが他の世界で『死んだ』料理なのだ。
料理もどういう状況になったら死ぬのかはわからないが、この店の厨房に当たる場所に卵に入って現れる。
転生してくるのだ。
どういうわけか皿に盛り付けられた状態で。
説明を聞いたお客さんは少し悩んでいるようだったが、食べることにしたらしい。
卵を割り、中の料理を取り出す。
うん、このお客さんは運がいい。
この料理は確かカレーライス。
味が安定しており、カレーライスであることがわかった時点でそれなりに美味しいことがわかり安心する。
お客さんは始めてみる料理にすこし警戒しているようだが、意を決して、卵に一緒に入っていた匙を掴んで食べ始めた。
そして、カレーライスを気に入ったであろうこのお客さんは、次にカレーライスを注文できるお店を探すのだ。
この店は新たな食と出会える店、転生食堂。
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