第184話:ニフ・ナップⅡ〜図書館の主〜
あ、いたいた。
全世の図書館の18層で探していたそれを見つけた。
流石に階段や梯子ではなく昇降機でここまで上ってきた。
「なんだ、また来たのか」
「ええもちろん、あなたとお話しするのは楽しいから」
図書館の上の方で見つけたのは、この図書館の主、音を食べる竜こと、シモンス。
私は最近はシモンスのところまで本を持ってきて、シモンスにもたれ掛かって本を読んでいる。
「ここは図書館なのだ、我などと話をするより本を読むといい」
「いいでしょう? 本も読むけど、あなたとお話しできるのはここしかないのだし」
「まぁ、そうだが……、勝手にするがいい、我は喋らん」
「そうですか、まぁいいです。横で本を読んでます」
「下の階層から持って来た本はしっかりと元の階層まで戻しておくのだ」
「しゃべらないんじゃ?」
「必要なことはしゃべるのだ」
それ以降はシモンスも黙り、私の声も食べられてしまった。
ペラリペラリと本をめくる音もシモンスに食べられて響かない、全くの無音、いつもの図書館だ。
背中にシモンスの鱗の冷たさを感じながら本をめくり続ける。
こうしていると、音は聞こえないのに物語の中の音がリアルに聞こえてくる。
シモンスが過去に食べた音が背中を通して聞こえてくるような感じだ。
こうして読むのが最近のお気に入りなのだ、静かなこの図書館での贅沢な本の読み方。
持って来た本を閉じる。
「帰るのか?」
「今日はね、またくるよ!」
「もう来なくてもいい、下の読書スペースで読むのだ」
「またね」
そう言って、階段を降りる。
「まったく」
という呟きを後ろに聞きながら、音がない図書館を下っていくのだった。
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