第183話:ヒナタ・メイアⅡ〜空間魔法使いの朝〜
荷物を魔法で小さくしてカバンにしまう。
あとから出すときにわからなくならないように、仕切りをしっかり作る。
こうやって仕切りを作ってもいつもぐちゃぐちゃになるのはなんでだろう?
原因がわからず対策もできないから、仕方なく仕切りを作る。
結果としてぐちゃぐちゃになってしまうにしても意味がないわけじゃないだろう。
「準備よーし、今日も頑張るぞ!」
カバンを腰に着け、家を出る。
僕は魔法を貸す仕事をしていて、担当は空間魔法だ。
依頼を受けたらその現場まで行って、頼まれた通りの魔法を使う。
そういう仕事だ。
空間魔法を使える人は少ないらしく、必要としている人は多く、僕の仕事は当然のように多い。
ただ、今日はいつもよりも寝坊したので走っても始業の時間に間に合わないかもしれない。
「いいかな?」
小さく呟く、別に間に合わなくなってもいいかな?という意味じゃない。
そういう意味ではないが、人が少ない道を隠れるように選んでいく。
辺りから人通りが無くなった辺りで足を止めて、魔法を使う。
辺りの景色が歪んで、【ビリュシク】の建物の前に現れる。
「よぅし、セーフだ!」
「なぁにがセーフだ、ヒナタ・メイア」
後ろから声をかけられた。
「ひぃえぇ、組合長! おはようございますぅ!」
「ああ、おはよう。また、寝坊かね? まったく、もう少し早く起きればわざわざ魔法を使って来なくても済むのだぞ?」
怒られている、僕は朝から怒られているのだ。
むしろ、怒られ慣れているからもう平気だ。
「そろそろ始業の時間か、依頼を確認して現場に行くのだぞ」
「はーい」
さて、一通り怒られたところで仕事の時間だ。
今日、僕に来ている依頼は3件。
どれも特に急ぎというわけではない。
どれから行こうか、余裕がなければ断っても構わないのだ、楽そうなのを選ぼうかな。
よし、これにしよう。
さっそく現場に向かう。
現場に着いた。
「よぉ、また会ったな」
「帰らせてもらいます」
その依頼人は以前も依頼してきたことがある男、一緒にハグルメマルマスに追いかけられた奴だ。
「待てって、今日は前みたいなことにはならないからさ」
「ほんとですかぁ?」
「ほんとほんと、今回の目的地はこの座標だ、帰りはまた別で依頼するよ」
「まぁ、わかりました、行きましょう」
呪文と印で転送魔法を組み立てる。
そして、その後3日程帰ることができず、組合長にまた叱られたのだった。
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