第182話:皇勇人ⅩⅠ〜死んでもチョコを貰いたい〜
「メーティカさん、バレンタインって知ってますか?」
「バレンタイン?」
いつもの喫茶店、そこでいつものように店主のメーティカさんと雑談しながら紅茶を飲んでいた。
そして、最近転生してきた日本人から聞いて、ちょうどバレンタインの時期であることを知ったこともあり、話題に出してみた。
「バレンタイン、地球って世界の、日本という地域で、女性が男性にチョコレートを渡す日、地球の暦で2/14がその日に該当する、みたい?」
横から解説を入れられた。
概ね俺が説明しようとしたこと全部だ。
「メイナムはよく知ってるなぁ」
「あなたが、知ってることは、大体知ってる」
そうか、大体知ってるのか……、メイナムの前で知識自慢みたいな話はしない方がいいな、するほどの知識もないけど。
「とまぁ、俺の暮らしていた世界ではそういう風習があったんですよ」
「へぇ、変わった風習ですねぇ。チョコレートならうちでも取り扱ってますよ」
「あ、そうですか。じゃあ、ホットチョコレートを」
もちろん知っていたとも、先程俺が説明しようとしたことを一通り説明してくれたメイナムも肝心なことは言わなかった。
バレンタインに渡すチョコレートは好意を持っている相手に渡すものだということをだ。
別に、メーティカさんにそういう意図がないことは重々理解している。
ただ、この時期に、メーティカさんから勧められて注文して、チョコを受けとる、という事実が重要なのだ。
ちらりとメイナムの方を見るとニヤリと笑った。
笑うのかコイツ、初めて見たぞ。
というかこの顔はまさか、貸しだぞとでも言いたげだ。
まぁ、つまりはこういうことだろ。
「あー、あとメイナムにもホットチョコレートを、俺の奢りで」
「いいんですか?」
「ああ、いいんだ、さっき代わりに説明してくれたお礼にね」
「そうですか? いいならいいんですけど」
そう言って、三人分のホットチョコレートを用意してきた。
「あれ、三人分?」
「私も飲みます、二人が飲んで私だけそれを見ているだけというのはちょっと、センサーが鳴るかもしれないので、いけませんか?」
「いや、別にそんなことはないですけど」
「ですよね、はい、ホットチョコレートです。これはメイナムの分」
「ありがとう、いただきます」
お礼を言って受けとる。
メイナムの分も受け取ってメイナムに渡してやる。
たしかコイツ、店員なんだよな?
客の俺と一緒にカウンターに座っているのはどうなんだろうか。
他に客もいなくて仕事もないみたいだし、いいのか……。
そんなことを考えながらホットチョコレートを飲む。
「あ、うまいな」
「ありがとうございます、うんおいしくできてますね」
メーティカさんも、飲んで自分で誉めている。
メイナムは……無言でコクコクと飲んでいる。
なんなんだコイツ。
まぁ、当初の目的であったメーティカさんからチョコを貰うというのは達成できた。
今度誰かに自慢してやろう。
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