第175話:ユリオン・ミウス〜ガチャガチャ〜

「お、そこの兄ちゃんガチャ引いてかねぇかい?」

「ガチャ?」

「ああ、この箱はな、開ける度に中身が変わるんだが、いいもんが入ってることもある、どっかの世界ではこういうのをガチャっていうらしいんだわ」

「ふぅん、例えば何が出てくるんだ?」

「そうだなぁ、前に見たのはでけぇテルトリアン鉱石の塊、当てたやつから聞いた話300万パソで売れたと聞いた」

「なぜ自分で開けない?」

「この箱を開けるのは有料なんだ」

「詐欺なら別のやつにしてくれ、俺はそこまで馬鹿じゃない」

「有料といっても受けとるのは俺じゃない、この箱のこの部分に携帯端末デバイスを当てて支払う、すると箱にかかった鍵が開いて中身が取り出せるってわけでな、一回1000パソで初回無料だ」

「やけに安いな、300万パソの品が出るんだろう?」

「さぁね、運がいいと出るってだけだからな、大半はあまり価値のない物が出るね、一回目は無料で開けられるから運試しに一回どうだい?」

「そうだな、一回開けてみるか」

「はいよ、さて何が出るかね?」

 携帯端末デバイスを翳すとカチャりと、箱のロックが解除された音がした。

「お、これはいいものだな、見たところロメル王の使っていたヒクニカの斧のレプリカ、相場は5万パソってところか」

「これが5万パソだと、本当に貰っていいのか?」

「いいぜぇ、もう一回開けるか?」

「よし、開けよう」

「二回目以降は1000パソだ」

「問題ない」

 5万パソの品がこんなに簡単に出るのなら何百と開ければ大もうけできるだろう。

「さーて、何が出るやら」

 携帯端末デバイスを翳すと箱のロックが解除された音がして、携帯端末デバイスに1000パソ支払った旨が表示された。

「うーん、微妙なもんだな、カンテの欠片、相場は20パソ」

「くっ、もう一回だ」

「はいよ」

 再び携帯端末デバイスを翳して箱を開ける。

「これもまた微妙な、名も知れぬ短剣、相場は300パソ」

「まだだ、もう一回だ」

「はいよ、ちょっとだけいいものだ、クルスククルのコイン、相場は1100パソ」

「もう一回だ!」

「はいよ、割れた鏡、ゴミだね、値は付かない」

「まだまだ!」

「はいよ」

 その後20回ほど開けたところで、使える金がなくなった。

「惜しいがもう金がない、じゃあな」

「先程のヒクニカの斧のレプリカを4万6000パソで良ければ買い取ってやるが?」

「なに?」

「俺もなんの益もなく箱を開けさせてるわけじゃなくてな、箱から出てきたものをすこーし安く買い取って相場で売ることで利益を得てるんだわ」

「それで?」

「まだ開けたいんだろう? その斧を俺に売れば46回開けられるぞ、ということだ」

「なるほどね、売った!」

「よし買った、ほれ」

 箱を持つ男と携帯端末デバイスを合わせて送金してもらう、確かに4万6000パソ入った。

「さぁて、次は何が出るかな?」

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