第174話:ルルニア=ローテルⅥ〜腐った卵〜
「うわ! なにこの臭いは」
交代の時間になって次の時間の人が来ての第一声がそれだった。
私も困っているのだ。
「これなんですけど、」
辺りに漂う腐敗臭、その発生元はいくつもの転生卵。
「なにこれ、腐ってる?」
「どうなんですかね、こんなに腐敗臭のする転生者は初めてで対応に困っているんですよね、転生卵から出て来ないし、たくさんだし」
「うーん、特殊な例ね、過去に前例がないかどうか調べてみるわ」
「調べたけどなかったですよ」
「前例なし、か」
「一応、一度にたくさん来ているし、戦争とかかなとは思うんですけど、戦争だと結構普通に出て来るんですよね」
前にあったときは、一気に転生してきて対応が大変そうだなと思ったのを覚えている。
その時の私は別の業務をしていたが。
「どれくらい前からこのままなの?」
「二時間程前から増え続けていますね、もう上限に達したのかここでは増えてませんけど」
「他のところでも溢れかえっている可能性があるね、聞いてみるか」
「お願いしますね」
「やぁやぁ、めっちゃ臭い転生卵、うん、そうそう、やっぱりそっちにも来ているのかい? あー、そうかい、うん、ありがとう、じゃあ、また今度遊ぼうか」
「なにかわかりました?」
「他も困ってるって、解決してないみたい」
「どうするんですか、このままだと他の転生者が来ませんよ?」
「そいつは楽でいいや」
「真面目にやらないと全部の責任をあなたに押し付けて帰りますよ」
「待ってくれよ、自分の時間に来た卵はそいつの担当だろ?」
「最近そのルール変わったんですよ、転生卵から出て来た転生者は送り出すまで時間外になっても担当するということになったんですよ」
「え、知らないんだけど」
「就業規則を参照してください、20日程前に改訂されたんです、ちゃんと通知もされました」
「うわー、マジかぁ。今度私もめんどくさそうな転生卵を放置して次に押し付けよ」
「だめですよ、真面目に考えるなら手伝いますから」
「うーん、転生卵は転生者に割らせるっていうルールは改訂されてない?」
「ないですね」
「そっか、じゃあ事故ってことにしといて」
「え?」
鼻を押さえながら、転生卵の一つに近づいて、叩く。
「うーん、内側からだと簡単に割れるのに外から叩くと硬いなぁ」
「なにしてるんですか!」
「前向きに処理しようかなってね、なんか硬くて力乗せやすい棒みたいなの持ってない?」
あー、とりあえずうっかり割ったことにして進展させようとしてるのか、乱暴なやり方だけど。
「持ってませんよ」
「ないかぁ、何かいい感じの魔法持ってたかな、お、これ使うか」
いい魔法を見つけたのか、再び転生卵に近づく。
そして、魔法を発動させると転生卵が割れた。
「いやー、うっかり
なんという棒読み、私はなにも見ていないことにしましょう、この時間私は既に帰ったということにします。
「うーん、転生者さん、無事ですか?ってうわぁ!?」
「どうしました?」
「死んでる」
「は?」
「転生卵の中身は腐った死体だ」
「どういうことですか」
「さぁね、たぶん他の転生卵も同じようなものだろうし、全部研究所に送ることにしようか」
「ううーん、よくわかりませんがそうした方が良さそうですね、解決したということで私は帰るので、後処理は任せました」
「えー、待ってくれよぉ」
「私はもう帰ったことになってるんです、ここにいないはずの私が処理するわけにはいかないでしょ」
その後、少しの問答の末、なんとか帰ることに成功した。
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