第173話:ユーリメニアストⅡ〜神の武器(量産品)〜
なんだかなぁ。
この世界に来てからしばらく経って、この世界にも慣れ、少しならば神力を物体に通したりすることができるようになった。
小枝を変質させて煙草に変え、火をつける。
不味い煙草だ、元にする枝が悪いか?
もう少し練習しないとだめだな。
今は練習として、武器を作っている。
草に神力を通して剣を作る、一応人間の作る物には負けていないはずだ。
辺りは背の高く鋭い草が多く、練習に使う草には困らなくていい、しばらく作り続けていたらこの一帯が剣の原になってしまうだろうが、なんの問題もあるまい、どうせ俺以外いないのだ。
さて、今日も剣を作るか。
手頃な草を適当な長さで切り、神力を通す。
重要なのは侵食していくイメージ、自らの一部と認識していく。
以前は全てが自分の意のままだったのが、今は集中してやっとこさ草一本に神力を通すことができる。
時間をかけて神力を隅々まで通したら、次は変質させる、変質自体は元々あまり使わない神力の使い方だったのであまり慣れていなかった、まさか死んでこんな世界に来ることになろうとは全く想像もしていなかったからな。
おっと、無駄なことを考えている場合じゃない、集中しなければ。
できれば、こんなに集中しなくても変質ぐらい使えるようになりたいが、まだそうもいかない。
特に形状が近いだけの物だ、材質が近いとかならばともかく、少しずつ近づけていかなければならない。
草から土へ、土から石へ、石から鉄へ、鉄からより硬度のある物質へ、近いもので変質を繰返して、最終的にはイルモティカの剣に変質させる。
うむ、いい出来だ。
「なんだこれは、なんでこんなに剣が」
ん、人か? この世界にも人がいるのだな、他の世界の神ではなさそうだ、微塵も神力を感じられない。
「何者だ」
「え、人?」
「人ではない、神だ」
「神? 神様がなんでこんなところに」
「単にこの世界に来たときにいた場所がここだったというだけだが、人がこんな場所へ来る方が珍しいが? いや、初めてのことだ」
「え、いやー、俺は新種の動物を探しに来ただけで、あ、そうだ、神様、この辺りで変わった動物を見かけたりしませんでした?」
「いや、何をもって珍しい動物と言うのかはわからんが、この辺りで動物を見かけたことなどないな、それにしても貴様、神に会ったというのに驚いたりせんのだな」
「え? あー、この世界じゃ神様に出会うってことも珍しくないんでね、もう驚くぐらい会ってて慣れてるんですよ、それにしても、すごい数の剣ですね、神様が拵えたんですか?」
「そうだ、暇潰しと練習を兼ねてな」
「ほぉ、少し頂いても?」
「好きに持っていけ、必用で作っているわけではないからな」
「ありがとうございます」
短い会話だったが、少し得るものがあったな。
この世界には他にも神々がいるのだ、それも、人の住んでいる領域に近くに住み、頻繁に人と接している神が。
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